【株式新聞・総力配信】中国市場を斬る(1)―楽観ムードどこまで、FA中核2銘柄の実態は?
2019/11/5 13:59
決算発表シーズンが前半のヤマを越えた。予想されていた通り、企業業績は米中貿易摩擦の影響を色濃く反映した厳しい内容となっている。製造業を中心に、通期計画の下方修正も相次ぐ状況。しかし、マーケットの楽観ムードは根強く、「中国主戦場銘柄」の値動きは事業環境とは対照的だ。そこに落とし穴はないのか、各社の状況から実態を探った。
<赤信号渡る相場、半導体投資が焦点に>
中国依存度の大きいセクターの代表格がFA(ファクトリー・オートメーション=工場自動化)だ。中でもコア銘柄に位置付けられるのが、工業用ロボットなどの世界的メーカーであるファナック<6954.T>と安川電機<6506.T>。景気に敏感で、中国売上高の比率が約2割(前期ベースで)を占める両社の業況は、重要な設備投資の指標として注目度が高い。
そんな両社の株価が、このところの中国をめぐる投資家の強気心理を如実に表している。
直近の株価は昨年末と比べ、安川電機が約5割、ファナックは3割高い水準にある。いずれも業績見通しを大きく下方修正したにも関わらず、相場は堅調そのものだ。
まるで赤信号を渡るような市場の買い。だが、ナンセンスかというと、実はそうでもない。前年同期比の減収率は、両社とも今期第2四半期(安川電機は6-8月、ファナックは7~9月)は前四半期と比べて縮小した。また、関係の深い半導体業界の市況回復を視野に入れた結果でもある。
さらに、中国経済が減速した大きな原因の米中摩擦についても、両国の歩み寄りが進んでいる。既に部分合意した貿易協議は、11月中にも両首脳が合意文書に署名するとみられている。
それでも、期待頼みの物色は「見切り発車」に変わりない。これまでは確かに吉と出た。だが、冷静に眺めると、強気シナリオを支えるだけの材料が決して十分でないことが分かる。
<受注の底確認できず、PER高水準>
まず、先行きの収益の土台となる受注高は、安川電機が第2四半期に前四半期比で6%減り、前年同期比の減少率は中国向けが前四半期と同水準の21%減に沈んだ。ロボット部門の落ち込みも拡大した。ファナックに至っては、第2四半期の受注高は6年ぶりの低水準。つまり底入れが確認できていない。
米中関係に関しては、改善と悪化を繰り返してきたことを忘れてはならない。トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が近く握手を交わしたとしても、防衛やテクノロジーをめぐる長期的な対立が続く限り、火種が消えることはないだろう。
PERは安川電機が59倍、ファナックが70倍という高さ。業績のV字回復局面ではままあることだが、まだそうなるかもわからない状況。最近のある業界団体の会見でファナックの稲葉善治会長は、中国市場について「来年春から夏にかけ半導体投資が上向く期待がある」としつつ、「(一過性の需要減だった)リーマン・ショックの時よりもしっかりとマーケットの動きを見極めたい」と慎重な姿勢を崩さなかった。
提供:モーニングスター社
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