英中銀、新型コロナ対策で0.50ポイント緊急利下げを決定―特別融資制度も発足

経済

2020/3/12 9:48

<チェックポイント>

●「ウイルス拡大により今後数カ月で英国経済が著しく悪化する可能性高い」と判断

●「経済を支えるため、さらなる必要な措置を講じる」と追加利下げを示唆

●BOE傘下の健全性規制機構、銀行に増配やボーナス引き上げの禁止を勧告

 イングランド銀行(BOE)は11日、金融政策委員会(MPC)の緊急会合を開き、新型コロナウイルス対策の1つとして、政策金利を全員一致で0.50ポイント引き下げ、過去最低の0.25%とすることを決めた。BOEの緊急利下げは08年10月の世界的な金融危機以来11年5カ月ぶりとなる。

 BOEは声明文で、今回の緊急利下げについて、「(ウイルス感染で)困難に直面している企業や消費者の景気への信頼感を下支えし、企業や家計のキャッシュフローを高め、また、借り入れコストを引き下げ、借り入れを円滑にするのに寄与する」とした上で、「ウイルス感染の英国経済への影響の大きさはかなり不透明だが、今後数カ月で、英国経済が著しく悪化する可能性が高い」と述べ、FRBの緊急利下げと同様、リセッション(景気後退)リスクに先手を打つ“保険”としての利下げであることを強調している。

 また、景気支援パッケージとして、ウイルス感染による中小企業や家計の資金繰りの悪化を防ぐため、1000億ポンド(約13.4兆円)のコロナウイルス関連特別融資制度「ターム・ファンディング・スキーム(FTSME)」を1年間の時限で創設することも決めた。これはBOEが銀行に直接、政策金利(0.25%)と同じ低金利で資金を供給することにより、これらの資金が企業や家計に融資される仕組み。融資期間4年のタームローン(証書貸付)となっており、企業や家計は一括、または一定期間内の分割で融資が受けられる。FTSME金利は政策金利に近い低金利が適用されるとしている。

 今回の緊急利下げや銀行の貸し出し能力の強化を狙ったFTSMEは事実上の景気刺激となる。英国のGDP(国内総生産)が1%押し上げられる見通し。特に、BOEは緊急利下げにより、市中銀行に保有を義務付けている景気変動抑制的(不況時には支援、景気回復時には抑制が可能)なカウンター・シクリカル資本バッファー(リスクを吸収するために必要なクッション)が最大で1900億ポンドが新たな融資財源となることに期待している。資本バッファーのリスク資産に対する比率を1%からゼロ%に引き下げ、少なくとも12カ月間はゼロ%を続けることを決めたため、今後、銀行はバッファーを積み上げるよりもバッファーを貸し出しに向ける可能性が高まると見ている。1900億ポンドは19年の銀行の企業向け融資額(純額ベース)の13倍に相当する。

 次回の通常会合(3月26日)が任期の最後となるマーク・カーニーBOE総裁は緊急利下げ後の会見で、「信用ひっ迫の可能性があるとき、資本バッファーを使うという政策手法は08年の金融危機時のQE(量的金融緩和)に匹敵するほど強力だ」と指摘。次期総裁に内定しているアンドリュー・ベイリー氏も会見で、バッファー金利がゼロとなり、少なくとも12カ月間は引き上げられないとなれば、かなりの規模の貸し出し増につながるとの見方を示している。

 今後の金融政策についてカーニー総裁は、「われわれは英国経済を下支えするためのさらなる必要な措置を講じる」とした上で、「まだ(すべての政策手段について)余地が残っている」と追加利下げの可能性を示唆した。市場ではBOEは政策金利を0.10%まで引き下げることは可能とみている。

 また、BOE傘下の金融機関の健全性を監視するPRA(健全性規制機構)も同日、市中銀行に対し、株主への配当金の支払いの増額や行内のボーナス支給額の引き上げを自粛するよう指示した。

 さらに、BOEは既存の資産買い取りスキームを通じたQEについても、全員一致で国債の買い取り枠を4350億ポンド、投資適格級の社債買い取り枠も100億ポンドと、いずれも現状通りとすることを決めた。

提供:モーニングスター社

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