RBA、市場予想通り政策金利据え置き、量的緩和継続を決定

経済

2020/5/7 9:05

<チェックポイント>

●国債市場の機能改善を受け、国債買い入れの規模や頻度を縮小

●「国債買い入れ増額の用意がある」と言明

●レポ取引オペの対象をノンバンクの投資適格級豪ドル建て社債にも拡大

 豪準備銀行(RBA)は5日の理事会で、政策金利であるオフィシャルキャッシュレート(OCR、銀行間取引で使われる翌日物貸出金利)の誘導目標を過去最低の0.25%に据え置くことを決めた。据え置きは前回4月7日会合に続いて2会合連続で、市場予想通りだった。3月19日の緊急会合で導入を決めたRBA初の量的金融緩和(QE)措置も据え置いた。

 RBAは投資家による資産の換金売りで豪州国債がパニック的に売られ、国債市場が一時機能不全となったことを受け、3月20日から3年国債の利回りの達成目標を0.25%に設定した上で、流通市場で国債買い入れを開始したが、今回の会合でも利回り達成目標を据え置いた。RBAは3年国債の利回りを低下させることにより、住宅ローン金利の低下や家計の負担軽減に寄与することを期待している。

 このほか、3月の緊急会合で1カ月物と3カ月物、6カ月物のレポ取引(売り戻し条件付)オペを通じ、金融システムに流動性を潤沢に供給することも決めたが、今回の会合ではオペ対象となる担保資産にノンバンクが発行した投資適格級の豪ドル建て社債を含めることも決めた。

 RBAは会合後に発表した声明文で、「新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、世界経済は深刻な落ち込みを経験しており、失業者が増加し、失業率が急上昇した」としたが、ウイルス感染の封じ込め対策により、多くの国で感染率が低下していることから、低下傾向が続けば、「大幅な金融緩和と景気刺激の財政出動により、世界経済は20年後半から回復に向かう」と楽観的な見方を示した。その上で、「(経済支援のための)豪3年国債の利回りの0.25%目標が達成され、国債市場の機能が改善している。それを受け、流通市場での国債買い取りの規模や頻度を縮小した」と、これまでの政府やRBAの緊急対策の効果が見えてきたことから金融政策を据え置いたとしている。

 RBAは3月20日以降の過去6週間で約500億豪ドルの国債を買い入れたが、国債市場の改善が進んでいるとして、4月30日に予定していた国債買い入れを中止した。ただ、RBAは国債買い入れの増額の可能性を否定せず、声明文で、「国債市場が機能し、3年国債の利回り目標を達成するために必要なことはすべて行う」と明言。その上で、「利回りの達成目標は完全雇用と物価の目標の達成が進展するまで維持する」としている。

 豪州経済の見通しについては、「20年前半の成長率は約10%のマイナスとなり、残りの後半は約6%のマイナス成長となる。しかし、21年は6%のプラス成長に回復する」と予想していることを明らかにした。

 失業率については、「今後数カ月にわたり、約10%で推移し、21年末時点でも7%超の高水準が続く」と予想している。ただ、「失業よりも平均労働時間の大幅減少により、雇用需要が低下すれば、失業率は予想より低くなる可能性がある」としている。

 インフレ見通しについては、「今後数年間、2%上昇を下回る水準が続く」とした上で、「1-3月期のインフレ率は2.2%上昇だったが、4-6月期は原油安などを反映し、一時的にマイナス圏になる」と指摘。その上で、「経済シナリオの標準予測では、21年のインフレ率は1-1.5%上昇となり、その後、徐々に加速する」と予想している。

 今後の金融政策の見通しについては、前回会合時と同様、「完全雇用に向けた進展がみられ、インフレが持続的に2-3%の目標範囲内に収まると確信するまで政策金利を引き上げない」とし、現在の低金利を今後数年間継続するとのフォワードガイダンスを維持した。

 市場では、中国で発生した新型コロナウイルスのパンデミック(感染症の世界流行)による豪州経済への悪影響が続いているものの、ウイルス感染拡大の先行きは感染封じ込め対策の効果によって左右され、依然不透明となっているため、金融政策を大きく変える可能性は低いと見ていた。

 ロウ総RBA裁も4月21日のウェブ講演で、コロナ危機により20年の豪州経済の成長率が約10%減になると予想した上で、「政策金利はインフレ率が2-3%上昇で持続すると確信できるまで引き上げない。現在の金利環境が何年も続く可能性が非常に高い。これは3年債利回りの0.25%目標の達成により強化される」としていた。

 次回会合は6月2日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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