英中銀、政策金利と量的緩和の規模据え置きを決定

経済

2020/5/8 9:46

<チェックポイント>

●資産買い取り、現在のペースなら年半ばで上限―2委員はQE増額を主張

●ロックダウン緩和で景気は早期回復へ―QE増額の緊急性低いとの見解大勢

●「GDPはコロナ危機で20年14%減、21年に15%増」と予想

 イングランド銀行(BOE、英中銀)は7日、金融政策委員会(MPC)の結果を発表し、政策金利を過去最低の0.10%に据え置くことを全員一致で決めた。また、非伝統的な金融緩和措置である量的金融緩和(QE)の規模を6450億ポンド(約85兆円)に据え置くことを7対2の賛成多数で決めた。QEの規模を巡って、2人の委員が1000億ポンドの追加増額を主張し、据え置きに反対した。

 BOEは既存の資産買い取りスキームを通じ、4350億ポンドの国債の買い取り枠と100億ポンドの投資適格級の社債買い取り枠を運用していたが、3月19日の臨時会合で2000億ポンド増額し、トータルの資産買い入れ額を6450億ポンドとしている。

 2委員がQEの増額を主張した背景には、資産買い取りが20年半ばごろに上限に達するとの見通しがある。声明文では、「資産買い取りは現在のペースで進めば、7月初めには上限に達する可能性がある」と指摘している。これに対し、2委員は、「金融市場は依然、タイト(金融ひっ迫)となっており、リスクプレミアム(上乗せ金利)が今後、高水準となる可能性がある。金融市場のひっ迫を抑制することにより、景気回復を着実にすべき。したがって、現在の買い取りペースを8月まで継続する必要がある」(議事抄録)とし、1000億ポンドの増額を主張したとしている。

 ただ、声明文では、「ロックダウン(都市封鎖)の段階的緩和や金融緩和措置、政府の財政出動により、経済活動は比較的早く回復し、インフレ率は物価目標の2%上昇に向かって加速していく」との楽観的見解も記されており、QE増額の緊急性は低いと判断した。

 BOEは政策金利を据え置いたことについて、声明文で、「新型コロナウイルスの感染と感染防止のロックダウンにより、英国や世界各国の経済に著しい悪影響が及んでいる。経済活動は年初以降、急激に落ち込み、失業者も急増している」と引き続き警戒感を示した一方、「中国が内需回復の兆しを示すなど、世界各国も経済活動への制限を緩和し始める可能性が高い」との見方も示し、今後の経済情勢を見守りたい考えを示している。

 金融市場については、「ここ数週間、金融市場はやや回復してきており、リスク資産の価格も3月中旬を底に上向いている」とし、2000億ポンドのQE拡大により、英国の国債市場がパンデミック(感染症の世界流行)を懸念した投資家のパニック売りが収まり、流動性のひっ迫状況が改善したとの見方を示した。

 景気の見通しについては、「家計消費支出は30%低下し、消費者信頼感も大きく低下している。住宅市場の活動も多くが停止状態にある。4-6月期の企業の売上高は正常時の水準を約45%下回り、企業投資も50%下回る見通しだ」と当面は厳しい状況が続くと予想している。

 インフレ見通しについては、「3月のインフレ率は前年比1.5%上昇(2月は1.7%上昇)に低下し、今後数カ月間は1%上昇を下回る可能性が高い」とし、前回3月会合時と同様の見方を示した。

 また、最新の経済予測を示す5月四半期インフレ報告書を発表。これによると、1-3月期のGDP(国内総生産)は前期(19年10-12月期)比約3%減となったと推定しているが、4-6月期は30%減にまで急落する見通しだ。それ以降はロックダウンの段階的緩和による経済活動の再開により、7-9月期から急回復するも20年通期の成長率は13%減と大幅に落ち込む。ただ、21年は14%増と急回復し、22年には3%増の通常の成長ペースに戻ると予想している。

 また、今回発表された金融安定報告書で、銀行の経営安全度を測るストレステスト(健全性審査)について、「コロナ危機を受け、21年末まで景気が悪化し、最初の2年間で企業や家計の債務の3.5%に相当する約800億ポンドの不良債権が発生した場合、銀行の中核的自己資本比率が約5%低下するものの、損失を十分吸収できる」と指摘し、コロナ危機でも銀行の健全性が保たれるとしている。

 今後の金融政策については、「景気を支援し、インフレ率が物価目標に向かって上昇していくために、必要に応じ、さらなる手段を講じる用意がある」としている。

 BOEの次回会合は6月18日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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