<新興国eye>カンボジア、20年の乾季は停電を回避―発電設備の増強続く

新興国

2020/5/8 11:10

 カンボジア鉱業エネルギー省によりますと、20年の乾季は、19年のような計画停電なしで乗り切れるようになるとのことです。発電設備の増強もありますが、新型肺炎の影響で電力需要が大きく伸びていないことも大きな要因であると見られます。

 発電設備の増強については、19年の乾季の計画停電に懲りて、緊急火力発電所(200メガワット×2カ所:合計400メガワット)の建設を、20年5月に完成させるとしていました。ただ、もともと無理なスケジュールであり、完成は20年末となるものと見られます。現在、工事は80%進ちょくしているとしています。なお、19年12月には、シアヌークビルで建設されていた石炭火力発電所の増設(150メガワット)が完成しました。

 太陽光発電も建設が進んでおり、4月にコンポンチュナン州で60メガワットの発電所が発電を開始しています。今後、20年中にバッタンバン州(60メガワット)、ポーサット(30メガワット)、バンテイメンチェイ州(30メガワット)、コンポンスプー(20メガワット)、スバイリエン州(20メガワット)の発電所(合計160メガワット)が稼働する見込みです。

 また、19年の乾季には少雨で出力が設備容量の25%程度に激減した水力発電所も、20年は70%程度の出力を維持している模様です。

 2019年末の設備容量(輸入電力込み)は3382メガワットでしたが、20年はその18%に当たる620メガワットが増強されることとなります。

 鉱業エネルギー省では、地方電化にも力を入れており、全国国の村落電化率を19年の93%から、20年末には98%にまで引き上げたいとしています。

 カンボジアでは、今後も電力需要が大幅な伸びを続ける見込みであり、発電所や送電線の増強、周辺諸国からの電力輸入交渉などに引き続き最大限努力していくことが必要と見られます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。1982年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。07年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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