<新興国eye>チェコ中銀、賛成多数で金利据え置き―3委員が0.25ポイントの利上げを主張

新興国

2023/5/9 8:51

 チェコ国立銀行(中銀)は前週(3日)の金融政策決定会合で、インフレを抑制するため、政策金利の2週間物レポ金利を7.00%に据え置くことを4対3の賛成多数で決めた。据え置きは市場の予想通りだった。ただ、3委員は0.25ポイントの利上げを主張、反対票を投じた。

 中銀は最近のインフレ加速を受け、21年6月会合で20年2月以来、1年4カ月ぶりに利上げを再開。22年に入っても2、3、5、6月に利上げを決めた。利上げ幅が計6.75ポイントに達したことから同8月会合で据え置きに転じ、利上げサイクルは9会合連続で止まった。これで金利据え置きは7会合連続。7.00%の政策金利は90年4月9日(7.20%)以来33年ぶりの高水準となっている。

 中銀は会合後に発表した声明文で、据え置きを決めたことについて、「今回の決定は最新の経済予測に基づいている」とした上で、「政策金利が標準シナリオよりも長く、現在の(高)水準に維持されるシナリオと、インフレ期待の上昇シナリオについて議論した」としている。前者のシナリオについて、中銀は、「今の政策金利は、国内需要を弱める水準にあり、家計部門や企業部門への銀行融資の伸びを鈍化させ、経済のマネーサプライ(通貨供給量)の伸びも鈍化させている」と、景気への悪影響を懸念する一方で、後者では労働市場の過熱(賃金上昇)と財政赤字の拡大によるインフレ圧力の上昇、つまり、インフレ期待の上昇に懸念を示した上で、これまでの利上げ効果を見守りたいとしている。

 今後の金融政策について、中銀は、「今後のさらなる経済データを考慮し、次回会合で金利を据え置くか、利上げするかを決定する」とし、利上げ再開の可能性にも含みを持たせた。さらに、中銀は前回会合時と同様、「インフレ率が物価目標に十分な速さで低下していないと判断すれば、金利を引き上げる用意がある」、また、「この観点からすれば、政策金利がピークに達したという市場の期待は実現しない可能性がある。最初の金利引き下げのタイミングに関する市場の観測は時期尚早だ」と、釘をさしている。市場ではインフレ率が前年比10.0%上昇を下回る今夏から利下げを開始すると予想している。

 インフレ見通しについては、3月のインフレ率が同15.0%上昇と、2月の16.7%上昇や1月の同17.5%上昇を下回ったが、中銀は、「インフレ率は引き続き低下する。今年下期には、金融逼迫とコスト圧力の緩和により、インフレ率は10.0%上昇を下回る。最新予測では、インフレ率は金融政策の期間(12ー18カ月)で、物価目標に近づく。23年は11.2%上昇、24年は2.1%上昇に低下する」と予想している。ちなみに、22年は15.1%上昇だった。

 その上で、中銀は前回会合時と同様、「インフレが十分に抑制されるまで、つまり2%上昇の物価目標で安定するまで、インフレとの戦いを続ける。これは金利がしばらくの間、比較的高いままであることを意味する」と述べており、現在の高い水準で金利が当分の間、据え置かれるか、利上げ再開の可能性を示唆している。市場では中銀は追加利上げするよりも、むしろ、早期利下げに反対する議論を強めていると見ている。金融緩和は9月までに開始され、今年末までに1.00%ポイント引き下げられると予想している。

 景気見通しについては、中銀は23年は0.5%増、24年を3.0%増と予想している。

 さらに、中銀は通貨コルナ安がインフレを加速させるとし、これまで頻繁にコロナ安阻止の市場介入を実施しているが、今回の声明文でも、「コルナの過度の変動(特にコロナ安)を防止し続ける」とし、為替介入戦略を変更しない考えを改めて強調した。

 次回の会合は6月21日に開かれる予定。

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 上場EM債<1566.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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