週間展望:海外勢は長期買い余力も目先スローダウンの可能性

日経平均予想レンジ――3万3000~3万4300円

 今週は日米欧の中銀が市場予想に沿った金融政策をとる中で、日経平均株価は週後半に弱含みつつも終盤に再び騰勢を強めて週末の取引を終えた。衆院の早期解散期待のはく落が海外勢を惑わせてしまった感は否めないものの、資金の流れが一変するほどのインパクトはもたらさないと考えられる。ただ、それを加味しなくとも直近までの主力大型株の上昇スピードの速さからは、目先一服の動きも想定される。

中銀ウイークを無難に通過

 FOMC(米連邦公開市場委員会、13~14日)では利上げの11会合ぶり停止が、次回7月での再開示唆とセットで打ち出された。ECB(欧州中央銀行)理事会(15日)は中銀預金金利を3.50%(従来比プラス0.25%ポイント)に引き上げ、7月の追加利上げを含ませた。そして、日銀の金融政策決定会合(15~16日)は、YCC(=イールドカーブコントロール、長短金利操作)を据え置いた。

 これらの決定はいずれも事前の想定通りで、市場で大きな混乱を招くことなく重要イベントを通過した格好。債券相場を中心に、欧米当局の継続的なタカ派姿勢もおおむね織り込まれていると考えらえる。また、日銀についても、次回7月27~28日の会合におけるYCC修正を見込む向きが多い。

 中銀のマーケットとの対話が機能していることが確認された点は、株式市場にとって好材料として前向きにとらえられる。また、世界経済を俯瞰(ふかん)すると、米国のインフレ減速と底堅い消費が並走しているように見える上、懸念材料の中国に関しても、政府の大型景気刺激策や金融緩和の観測が不安を和らげつつある。

 こうした状況は、日本株にとっても一定の下支え要素として意識される。長期的なマネーフローを参考にすると、依然として海外勢の買い余力は大きいとみられる。このため、今後も企業のガバナンス改革やデフレ脱却へ向けた動きが継続することを前提にすれば、日経平均はさらなる上昇が視野に入る。

バリュエーション先走り

 もっとも、短期的には外国人買いのペースダウンや利益確定売りの増加にも備えておきたい。企業の業績予想の増額を待たずに株価が上昇するケースが多いため、日本株のバリュエーションは過去のレンジ上限を大きく上回るレベルまで切り上がっている。日経平均採用のPBR(株価純資産倍率)1倍割れ銘柄数も、直近では全体の約45%と3月末の53%から減っている。

 7月下旬からは4~6月決算発表シーズンを迎えるが、中国依存度の大きい企業は収益が伸び悩む可能性も指摘される。それにより海外勢の日本株選好が一時的に鈍り、中国や米国などに資金が振り向けられる展開も見込まれる。

 来週は米国でパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の下院と上院での議会証言(各21日、22日)が予定されている。6月FOMCで示したスタンスを確認するものになることが予想される上、翌週発表の米銀のストレステスト(健全性審査)の無難な結果への期待で金融セクターには追い風が吹く可能性がある。

 このほか、国内では21日に5月訪日外客数、23日には5月CPI(消費者物価指数)が発表される。海外では20日に米5月住宅着工件数、23日に米国とユーロ圏の6月PMI(購買担当者指数)が出る。また、22日には米ワシントンDCでバイデン米大統領とインドのモディ首相が会談する。日経平均の予想レンジは3万3000~3万4300円。

勝負株はイオンファン、ノーリツ鋼

 今週は新光電気工業(6967)が週半ばまで上昇(一時前週比7.6%高)したほか、第一生命ホールディングス(8750)も下値を切り上げる動きの中で3.8%高まで買われた。第一生命HDを含む金融セクターは、今後の日銀のYCC修正期待などを背景に引き続き国内外からの資金流入が期待される。

 来週の勝負株。1つ目は、中国の景気刺激策を背景にイオンファンタジー(4343)をマークしたい。現地で遊戯施設を展開する同社の株価は直近上値が重い局面にあるが、事業環境の好転が意識される。株価は26週移動平均線の水準で反発して下ヒゲを引いた。

 2つ目は、円安・ユーロ高が追い風のノーリツ鋼機(7744)。ペン先や金属部品、音響機器を手掛ける同社は欧州売上比率が高く、1円のユーロ安が年間で1.1億円の営業増益要因となる(今12月期の連結営業利益予想は76億円、前期比6倍)。為替前提は1ユーロ=132円と時価(16日午後3時時点で154円台)と比べて保守的だ。

(市場動向取材班)

(写真:123RF)

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