<新興国eye>トルコ中銀、新総裁の下で政策金利を15%に引き上げ―予想を下回り失望感広がる

新興国

2023/6/23 8:52

 トルコ中央銀行は22日の金融政策決定会合で、主要政策金利である1週間物レポ金利を8.5%から15%へと一気に6.5ポイント引き上げた。ただ、市場の大幅引き上げ予想よりも利上げ幅が小さかったため、今後の利上げペースが小さくなるとの懸念が広がった。市場では最大で40%、最低でも14%、平均20%超への利上げを予想していた。

 予想を大幅に下回ったことを受け、外為市場では失望感が強まり、通貨トルコリラがドルに対し、一時、4%超急落した。

 中銀は2月6日の大震災を受け、震災復興を支援するため、2月会合で22年11月以来3会合ぶりに利下げに踏み切ったが、3月会合で現状維持に転換。前回5月会合まで3会合連続で据え置いたが、新総裁に就任したハフィゼ・ガイ・エルカン氏の下で、初めて開かれた今回の会合で利上げに転換した。15%の金利水準は18年6月(16.5%)以来、5年ぶりの高水準。

 エルカン氏は米証券大手ゴールドマン・サックスの元マネジメント・ディレクターで、同氏を総裁に任命したレジェプ・タイップ・エルドアン大統領が13日の機中会見で、今後の金融政策について、大統領再選後の6日に新財務相に指名したメフメト・シムセク元副首相・財務相の金融政策方針に従う考えを示したため、これまで高インフレが続く中、インフレ抑制のための利上げに反対を唱えてきたエルドアン大統領が今後、財務省やトルコ中銀の金融政策の決定に干渉せず、正統派のインフレ抑制策である金融引き締め(利上げ)への転換を承認したものと見ていた。

 しかし、今回の利上げ幅が市場予想を下回ったため、金融政策決定後、失望感が広がった。会合前、市場では中銀はインフレ抑制のため、政策金利を40%にまで引き上げたあと、インフレ(5月時点で前年比39.59%上昇)が安定する年末までに約25%に引き下げると予想していた。ただ、金利スワップ市場では7月と8月の会合で政策金利は25%超、年末までに約28%に引き上げられると見ている。

 中銀は会合後に発表した声明文で、利上げに転換した理由について、「できるだけ早くディスインフレ(物価上昇率の低下)への道筋を確立し、インフレ期待を抑制、(企業の)価格設定行動の悪化(値上げ)を抑制するための金融引き締めプロセスを開始した」としている。また、「世界のインフレ率は低下傾向にあるものの、依然として長期の平均伸び率を大きく上回っている。その結果、各国中銀はインフレを抑制するための措置を講じ続けている」とし、トルコも各国中銀と足並みをそろえ、利上げを押し進める考えを示している。

 今後の金融政策については、中銀は、「金融引き締めは、インフレ見通しの大幅な改善が達成されるまで、適時かつ段階的に必要なだけさらに強化される」とし、その上で、「インフレ指標(全体指数)とコアインフレの動向を注視、物価安定という主目的に沿って、あらゆる金融政策ツールを断固として使用し続ける」とし、追加利上げを段階的に継続する方針を明らかにした。

 中銀がこれまで採用してきた、トルコリラの急落を阻止するリラリゼーション戦略については、今回の会合ではリラリゼーション戦略に関する文言を削除、その代わりに、「市場メカニズムの機能を高め、マクロ金融の安定を強化する。そのため、既存のミクロとマクロ・プルーデンスな政策(金融システムの安定を目指した政策)の枠組みを簡素化し改善する」とし、リラの相場変動を市場のメカニズムにまかせる考えを示している。リラリゼーション戦略とは金融システムでのトルコリラの利用拡大により、インフレ加速要因となるトルコリラ安を阻止し、物価安定を目指すという戦略。

 次回の金融政策決定会合は7月20日に開かれる予定。

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 上場MSエマ<1681.T>

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