英中銀、0.5ポイント追加利上げ―2委員が利上げサイクル停止を主張

経済

2023/6/23 9:58

<チェック・ポイント>

●BOE、「雇用市場の逼迫と需要の回復でインフレがさらに持続する兆候がある」

●BOE総裁、「インフレは高すぎ、物価目標に戻すため、必要な決定を下す」

●市場、次回8月会合で追加利上げ―年末までに最終金利6%を予想

 BOE(イングランド銀行、英中銀)は22日、金融政策委員会(MPC)の結果を発表し、政策金利を0.5ポイント引き上げ、5.00%とすることを9委員中、7対2の賛成多数で決めたことを明らかにした。市場では0.25ポイントか0.5ポイントの予想でほぼ二分されていた。

 利上げは13会合連続。今年2月会合でインフレ率が依然、物価目標を上回り、高い伸びが続いているため、0.5ポイントの引き上げを決めたが、前回3月会合で2月のインフレ率が4カ月ぶりに伸びが加速したものの、一過性と判断、利上げ幅を0.25ポイントに縮小した。0.5ポイントの大幅利上げは2月以来、2回目。5%の金利水準は08年4月(5%)以来約15年ぶりの高水準となる。

 今回の追加利上げにより、住宅ローンの借り手に打撃を与える見通しが一段と強まった。エコノミストは住宅ローンの借り手の返済負担増や住宅市場の冷え込みにより、インフレ低下が進むと見ているが、政界ではリセッション(景気失速)のリスクが高まり、生計費危機が深刻化するとして、利上げサイクルの継続に反対する意見が強まっている。

 スナク首相は21日の議会答弁で、24年の総選挙に向け、23年末までにインフレ率を半減するとの公約を繰り返したが、クレバリー外相は21日の英スカイニュースのインタビューで、利上げにより国が意識的に経済を縮小すべきだという提案を支持できないとし、リセション引き起こす利上げサイクルの継続に反対を表明するなど、閣内不一致が目立ち始めている。

 BOEは声明文で、追加利上げを決めた理由について、「インフレ率は3月の前年比10.1%上昇から4月の同8.7%上昇に低下、5月も同水準にとどまったが、5月経済予測を0.3ポイント上回った。5月のサービス価格も同7.4%上昇と、予想よりも0.5%ポイント高かった。財価格も予想よりもはるかに強かった」とし、その上で、「最近のデータには雇用市場の逼迫と需要の回復力の継続を背景にインフレが一段と持続する兆候があった」とし、インフレ率が想定以上の伸びとなり、依然、大幅に物価目標(2%上昇)も上回る高い伸びにあることを挙げている。

 BOEは今後の金融政策について、「雇用市場の逼迫や賃金上昇率やサービス価格の動向など持続的なインフレ圧力の兆候を引き続き注視していく。より持続的なインフレ圧力の証拠があれば、金融政策のさらなる引き締めが必要になる」とし、前回会合時で使った、「インフレ率を持続的に2%上昇の物価目標に戻すため、必要に応じ、政策金利を調整(利上げ)する」との文言を残し、追加利上げに含みを持たせた。

 市場では今後も利上げサイクルが継続、BOEは次回8月会合で0.25ポイントか0.5ポイントの利上げを予想。最終金利は今年末までに、01年2月以来の高水準となる6%に達し、24年5月まで据え置かれると予想している。

 BOEのベイリー総裁は会見で、「インフレは依然として高すぎる。サービスインフレが短期的に高止まりする可能性がある」としたが、「ハント財務相に年末までにインフレ率(全体指数)は主にエネルギー価格の動向を反映し、大幅に低下するとの予想を伝えた」と述べた。しかし、同総裁は「住宅ローンなどローンを抱えている多くの人が心配するのは当然だが、今利上げしなければ、後でさらに悪化する可能性がある」とし、「我々はインフレ率を2%上昇の物価目標に戻すことにコミットしており、それを達成するために必要な決定を下す」と述べている。

 次回の会合は8月3日に開かれる予定。

提供:ウエルスアドバイザー社

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