海外株式見通し=米国、香港
【米国株】ヒートポンプ空調機の特需に注目
FRB(米連邦準備制度理事会)の関係者とパウエル議長が年内追加利上げの「タカ派」姿勢を強める一方で、米国株式市場はインフレ率鈍化をいっそう強く織り込み始めたようだ。両者の対決姿勢は強まりつつある。
まず、第1ラウンドとして6月30日発表の5月個人消費支出(PCE)価格指数の伸びが前年同月比、前月比ともに鈍化し、追加利上げ路線に反旗を翻す株式市場側が勝利を収めたかのようだ。4日の独立記念日を挟み、7日に6月雇用統計、さらには12日に6月CPI(消費者物価指数)が控える。
FRBと市場の言い分のどちらに軍配が上がるのか、日々刻々と戦況は変わっていく。市場の支援を受けた大型ハイテク株や半導体株の動きもそれに伴い、高値圏での神経質な動きとならざるを得ないだろう。FRBがスタンスを変えない限り、昨年8月のジャクソンホール会議のパウエル議長発言の後のように、いずれ株式市場側がFRB側に歩み寄ることとなれば、調整局面は避けられないだろう。
こうした中、注目テーマとして「ヒートポンプ空調機」が浮上している。日本のダイキン工業(6367)などが強く、エネルギー効率に優れ欧州だけでなく米国でも重要視されるようになった。
ヒートポンプ空調機は、米国のエネルギー消費の4割を占める暖房からの温暖化ガス排出削減に資するとの認識が広がり、需要が急増している。バイデン政権は4月、戦略物資の国内生産を促す「国防生産法(DPA)」とインフレ抑制法に基づき、同空調機の生産設備を新設・増設する企業に最大2.5億ドルを提供する計画を発表。また、昨年にはヒートポンプを新規導入する世帯が最大8000ドルのリベートを受けられる制度を導入した。
米政府はEV(電気自動車)補助金については国益重視の観点から外国企業を排除した。それだけに、伝統ある空調メーカーによる国内生産が保護される可能性もある。米空調設備メーカーでは、キャリア・グローバルやトレイン・テクノロジーズが知られる。
【香港株】香港上場のEVメーカーをめぐる動向
中国の自動車販売台数は、昨年11~12月に新型コロナウイルスのまん延などの影響で伸び悩んでいたものの、EVのほかに、PHV(プラグイン・ハイブリッド車)とFCV(燃料電池車)を含む新エネルギー車は、12月に政府の補助金が終了する前の駆け込み需要で販売が伸びていた。
それらの優遇策が終了した後も、新エネルギー車については5月にかけて持ち直しの兆しがみられる。その背景として、リチウムやコバルト、ニッケルなどのEV向け電池材料「バッテリーメタル」の価格下落が挙げられる。バッテリーメタルの値下がりは電池コスト低下を通じてEVの普及を後押しする可能性がある。
そこで、香港上場の中国の主要なEVメーカーである比亜迪(BYD)、理想汽車(Li Auto)、小鵬汽車(シャオペン)の1~3月の業績を振り返る。
BYDは、売上高が前年同期比80%増の1201億元、営業利益が同4.3倍の50.59億元となり、粗利益率は17.9%と2022年通期よりも上昇した。生産規模の拡大によるコスト削減が功を奏した。Li Autoは、売上高が同2倍弱の183.30億元、営業利益が前年同期(4.10億元の赤字)から4.10億元へ転換。四半期ベースで初の営業黒字を達成した。
一方、シャオペンは、売上高が同46%減の40.30億元、営業利益が前年同期の19.20億元の赤字から25.85億元の赤字へ悪化した。部品調達がボトルネックとなり生産を思うように増やせなかったとみられる。
※右の画像クリックでグラフ拡大
(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
(写真:123RF)
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