<新興国eye>トルコ6月CPI、前年比38.21%上昇に減速―前月比は3.92%上昇に加速

新興国

2023/7/6 10:36

 トルコ統計局が5日発表した6月CPI(消費者物価指数、03年=100)は前年比38.21%上昇と、前月(5月)の同39.59%上昇や前月(4月)の同43.68%上昇を下回り、22年10月の同85.51%上昇をピークに8カ月連続で減速。市場予想(39.47%上昇)も下回った。水準的にも21年12月(36.08%上昇)以来の低い伸び。

 同国のCPI伸び率はウクライナ戦争の勃発(22年2月24日)と、それに伴う西側の対ロ経済制裁により、エネルギー価格の高騰と、中銀の利下げに伴う通貨トルコリラの急落が加わり、インフレ率は21年6月(前年比17.53%上昇)以降、22年10月(同85.51%上昇)まで17カ月連続で急加速したが、同11月(同84.39%上昇)にようやく1年6カ月ぶりに伸びが減速に転じている。

 インフレ率の伸びが減速したのは、引き続きエネルギー価格の伸びが減速していることに加え、前年同期のインフレ率が高かったため、低目の数値が出る、いわゆるベース効果が大きい。1年前(22年6月)のインフレ率は78.62%上昇と、その1年前(21年6月)の17.53%上昇から急加速している。

 また、市場では2月6日に南東部を襲った大規模地震(死者数約5万人)後の災害復旧で急激な物価上昇が懸念されたが、政府が5月の大統領選を控え、一時的に5月の天然ガス料金を無料化したため、トルコ統計局がCPIを構成する天然ガス価格を5月にゼロにしたことが5月のインフレ急減速に寄与したと見ている。全体指数に占める天然ガスのウエートは2.9%。政府は5月の天然ガス無料化に加え、24年5月までの時限措置として、毎月25立方メートルまで無料化することも決めている。

 ただ、6月は天然ガス無料化の影響は剥離したため、前月比は3.92%上昇と、前月の0.04%上昇や4月の2.39%上昇を大きく上回り、1月(6.65%上昇)以来、5カ月ぶりの高い伸びとなった。また、通貨トルコリラ安が急速に進んだことや、ガソリン価格の上昇、サービス価格や自動車などの上昇も背景。ただ、市場予想(4.84%上昇)を下回った。

 セクター別(前月比)では、アルコール飲料・たばこが11.13%上昇と、最も高い伸びとなり、次いで運輸が7.96%上昇、ホテル・カフェ・レストランは4.32%上昇と、全体の伸び(3.92%上昇)を上回った。対照的にヘルス(薬局・美容)は1.21%上昇と、最も低く、次いでアパレル・靴が1.45%上昇、レクリエーション・文化は1.45%上昇となった。天然ガス料金を含む住宅(光熱費や修理費)は2.99%上昇と、5月の13.79%低下から急加速。食品・清涼飲料水は3.02%上昇(5月は0.71%上昇)だった。

 他方、全体指数から値動きの激しい食品やエネルギーなどを除いたコアCPI(グループC)は前年比47.33%上昇と、5月の同46.62%上昇から伸びが加速、3月(47.36%)上昇以来の高い伸びとなった。

 セクター別の前年比(全体指数)は、ホテル・カフェ・レストランが67.22%上昇(前月は68.98%上昇)と、最も高い伸びとなった。次いでヘルスが65.69%上昇(同66.93%上昇)、食品・清涼飲料水が53.92%上昇(同52.52%上昇)、教育は50.71%上昇(同50.86%上昇)。対照的に、天然ガス料金を含む住宅が14.76%上昇と、最も低い伸びとなり、5月の20.73%上昇(4月は43.18%上昇)から2カ月連続で急減速した。次いで運輸は20.75%上昇(同23.68%上昇)、アパレル・靴が21.00%上昇(同19.49%上昇)。

 市場では今後のインフレ率は6月統計を底に、7月から伸びが加速すると懸念している。レジェプ・タイップ・エルドアン大統領の再選(3期目)後、財務相がヌーレッディン・ネバティ氏から市場の信頼が厚いメフメト・シムセク氏(元財務相・副首相)に交代、中銀は6月22日の会合で利上げを決め、正統派の金融政策に転換した。しかし、金融引き締めがどの程度進むかは不透明でリラ安が進んでいることや、エルドアン大統領は今後、選挙公約の巨額の財政支出を行うため、インフレが加速し始めると予想している。インフレ率は7月から加速、23年のインフレ率は40-45%上昇になると見ている。

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