<新興国eye>マレーシア中銀、予想通り金利据え置き―景気リスクに配慮

新興国

2023/7/7 8:56

 バンク・ネガラ・マレーシア(中銀)は6日の金融政策決定会合で、景気を支えるため、政策金利である翌日物政策金利(OPR)を3.00%に据え置いた。市場の予想通りだった。

 中銀は22年5月会合で、インフレ抑制のため、18年1月25日以来、4年4カ月ぶりに利上げに転換、同11月まで4会合連続で利上げした。利上げ幅が計1.00ポイントに達したため、今年1月会合で22年3月以来、5会合(10カ月)ぶりに据え置きに転換。3月も2会合連続で据え置いたが、前回5月会合で市場予想に反し、追加利上げを実施した。金利水準をコロナ禍前の19年11月(3.00%)以来の水準に戻っている。今回の据え置き決定は3月会合以来。

 中銀は会合後に発表した声明文で、据え置きを決めたことについて、「現在の金利水準では金融政策スタンスはやや緩和的であり、引き続き景気を下支えしている」とし、最近の経済成長の鈍化の兆しに対応するため、据え置くことにより、景気下振れリスクにも配慮したことを強調している。

 また、中銀は、「将来の金融的不均衡(株価バブルなど資産価格の急上昇)リスクは限定的と見ている」とし、前回会合での利上げによる、金融政策の正常化の目的が達成されたと判断、金利を据え置いた。

 前回会合時、中銀は、「国内景気の見通しは依然、強靭性を示しているため、金融緩和の度合いをさらに正常化することが適切と判断した。これより、コロナ禍から景気を回復するための金融刺激(金融緩和)策を撤回した」とし、金融政策を正常化するための金利調整であることを強調。また、「マレーシア経済の継続的な強さを考慮、また、将来の金融的不均衡リスクを防ぐため、金融政策のスタンスが適切になるようにする」とし、金融政策の決定要因として、新たに金融的不均衡を追加していた。

 中銀は景気見通しのリスクについて、「1-3月期は力強い経済成長が見られたあと、ここ数カ月のマレーシア経済の拡大ペースは外需の鈍化で輸出が圧迫され、鈍化した」とし、景気鈍化の兆しに懸念を示している。外需低迷により、製造業が圧迫され、4月の鉱工業生産は約2年ぶりに減少したほか、5月の輸出は3カ月連続で減少していることが背景。

 ただ、中銀は、「今年後半は引き続き底堅い内需が成長をけん引。観光客数も着実に改善しており、今後も増加する。投資活動は複数年のインフラ整備プロジェクトの進捗によって支えられる」と見ている。

 景気の見通しに対するリスクについては、「上ブレと下ブレの両リスクがある」としたものの、「経済成長見通しには世界経済の予想を下回る成長に起因する下振れリスクがある」と指摘している。政府の23年の成長率見通しは4-5%増。

 インフレ見通しについては、中銀は、「コスト低下により、インフレ率の全体指数は引き続き緩和しているが、コア指数は依然、高水準にある」とした上で、「23年下期には、全体指数とコア指数の両方がおおむね予想の範囲内で低下すると予想している」とし、「インフレリスクはコア指数の今後の動向次第」との見方を示している。前回会合時では、「インフレ見通しに対するリスクは上向き」としていた。

 今後の金融政策について、中銀は、「引き続き、今後の経済やインフレなどの状況の進展を警戒しており、景気とインフレの見通しの判断に必要なデータを注視する」とし、今後の金融政策は会合ごとのデータに基づき、予断を持たずオープンなスタンスを維持したい考え。

 市場では中銀はインフレが鈍化する中で、景気鈍化の兆しを強調したことを受け、追加利上げの必要性がなく、景気支援のため、今年末まで政策金利を据え置くと見ている。ただ、一部では中銀は金融政策の舵取りを慎重に行うため、追加利上げの可能性を残しているという見方もある。

 次回の会合は9月7日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 ブルサKLC<1560.T>、アセアン50<2043.T>、アジア債券<1349.T>、

 上場EM債<1566.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ