<新興国eye>トルコ中銀、予想下回る2.5ポイント引き上げ―今後も段階的小幅利上げを示唆

新興国

2023/7/21 8:45

 トルコ中央銀行は20日の金融政策決定会合で、インフレを抑制するため、主要政策金利である1週間物レポ金利を2.5ポイント引き上げ17.5%とすることを決めた。市場の大方の予想は5.0ポイントの大幅引き上げだったため、サプライズとなった。

 利上げ幅が予想を大幅に下回ったことを受け、外為市場では失望感が強まり、通貨トルコリラがドルに対し、一時、0.5%下落した。市場では5.0ポイント未満の利上げはリラの下落圧力を高めると見ている。中銀は今後も市場の期待とは反対に、利上げペースを小さくする方針で、前回6月会合で決めた6.5ポイントの利上げペースは後退したと失望感を強めている。

 中銀は2月6日の大震災を受け、震災復興を支援するため、2月会合で22年11月以来3会合ぶりに利下げに踏み切ったが、3月会合で現状維持に転換。5月会合まで3会合連続で据え置いたが、新総裁に就任したハフィゼ・ガイ・エルカン氏の下で、初めて開かれた前回6月会合で、21年3月以来2年3カ月ぶりに利上げに転換。17.5%の金利水準は21年9月(18.0%)以来、1年10カ月ぶりの高水準となっている。

 中銀は会合後に発表した声明文で、追加利上げについて、前回会合時と同様、「できるだけ早くディスインフレ(物価上昇率の低下)への道筋を確立し、インフレ期待を抑制、(企業の)価格設定行動の悪化(値上げ)を抑制するための金融引き締めプロセスを開始した」としている。また、「世界のインフレ率は低下傾向にあるものの、依然として長期の平均伸び率を大きく上回っている。その結果、各国中銀はインフレを抑制するための措置を講じ続けている」とし、トルコも各国中銀と足並みをそろえ、利上げを押し進める考えを示している。

 また、今後の金融政策については、中銀は前回会合時と同様、「金融引き締めは、インフレ見通しの大幅な改善が達成されるまで、適時かつ段階的に必要なだけさらに強化される」とし、その上で、「インフレ指標(全体指数)とコアインフレの動向を注視、物価安定という主目的に沿って、あらゆる金融政策ツールを断固として使用し続ける」とし、段階的に小幅な追加利上げを続ける方針を改めて強調した。また、中銀は今回の会合で、利上げによる金融引き締め効果を支援するため、量的金融引き締めを行うことも決めた。

 中銀がこれまで採用してきた、トルコリラの急落を阻止するリラリゼーション戦略については、今回の会合でもリラリゼーション戦略に関する文言は避けられた。前回会合時と同様、「市場メカニズムの機能を高め、マクロ金融の安定を強化する。そのため、既存のミクロとマクロ・プルーデンスな政策(金融システムの安定を目指した政策)の枠組みを簡素化し改善する」とし、リラの相場変動を市場のメカニズムにまかせる考えを示している。リラリゼーション戦略とは金融システムでのトルコリラの利用拡大により、インフレ加速要因となるトルコリラ安を阻止し、物価安定を目指すという戦略。

 次回の金融政策決定会合は8月24日に開かれる予定。

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