<新興国eye>ブラジル中銀、0.5ポイントの利下げに転換―次回会合でも同規模の利下げを示唆

新興国

2023/8/3 9:04

 ブラジル中央銀行は2日の金融政策決定委員会で、政策金利(セリック)である翌日物金利誘導目標を0.50ポイント引き下げ、13.25%とすることを5対4の賛成多数で決めた。4人の委員は0.25ポイントの小幅利下げを主張した。利下げへの転換は市場の予想通りだったが、大方の予想は0.25ポイントの小幅利下げだったため、サプライズとなった。

 中銀はインフレの急加速を受け、21年3月会合で15年7月以来、5年8カ月ぶりに利上げに転換。22年8月会合まで12会合連続で利上げを実施、利上げ幅が21年3月以降で計11.75ポイントに達したことを受け、同9月会合から現状維持に転換、前回会合まで7会合連続で金利を据え置いた。今回の利下げ転換は20年8月に過去最低の2.00%に引き下げて以来、3年ぶり。ただ、利下げ後も金利は依然、22年8月(13.25%)以来1年ぶりの高水準で、インフレ抑制が期待される金融引き締め状況となっている。

 中銀は会合後に発表した声明文で、利下げに転換したことについて、「長期的なインフレ期待の低下とともに、金融政策(過去の累積的な利上げ)の効果を反映し、インフレシナリオに改善が見られた」としている。その上で、「最近の国家通貨審議会(CMN)による物価目標に関する決定を受け、段階的な金融緩和(利下げ)サイクルを開始する自信が得られた」としている。

 CMN(財務相や企画予算管理相、中銀総裁で構成)は6月29日に物価目標の設定をこれまでの1年ごとの見直しから2年に長期化し、26年の物価目標を3.00%上昇に設定した。これを受け、市場では中銀の物価目標が24年以降、26年まで変更されないため、利下げの余地が広がったと見ている。CMNは23年の物価目標を3.25%上昇、24-25年は3.00%上昇(許容レンジは上下1.50ポイント)に設定している。

 また、中銀は今後の金融政策について、「インフレシナリオが予想通りに進展すれば、次回9月会合でも全員一致で、同規模の追加利下げを予想している」とした上で、「ディスインフレプロセスに必要な金融収縮(金融引き締め)政策を維持するにはこのペースが適切と判断する」とし、段階的に利下げサイクルを開始する方針を示した。

 中銀が利下げサイクルについて、「段階的」としたのは、インフレリスクが残っているため。インフレ見通しについて、中銀は、「最近のインフレ率の低下にもかかわらず、今年下期のインフレ率の全体指数は上昇すると予想している。コア指数は最近、低下しているが、依然として物価目標を上回っている」とし、その上で、中銀は、「23年のインフレ率は4.9%上昇(前回会合時は5%上昇)、24年は3.4%上昇(同3.4%上昇)、25年は3.0%上昇と予想している」とし、23年の年間インフレ見通しを引き下げたものの、24年も物価目標を超えると予想している。

 今後の金融政策については、中銀は、「ディスインフレのプロセス(インフレの低下基調)が定着し、インフレ期待が物価目標近辺で安定するまで、縮小的な金融政策(金融引き締め)を継続する必要性がある」とし、急激な利下げを避けたい考えを示している。その上で、「金融政策の次のステップはインフレ率の動向や長期予測、インフレ期待の長期見通し、アウトプット・ギャップ(需要量が供給量を上回ったインフレギャップ)に依存する」とし、慎重に利下げサイクルを進める姿勢を示した。

 市場では急激な利下げはインフレ期待の持続的な抑制を妨げ、最終的には経済に打撃を与えるリスクを高めると見ている。このため、中銀は9月と11月、12月の3回の会合で計1.50ポイント(1回0.50ポイントの利下げ)引き下げ、12月末時点で政策金利を11.75%に引き下げると予想している。

 次回の金融政策決定会合は9月20日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 ボベスパ<1325.T>、上場MSエマ<1681.T>、上場EM債<1566.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ