【為替本日の注目点】米7月のNFP予想を下回る

為替

サーチナ

2023/8/7 10:08

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

 米雇用統計の結果を受けドル円は下落。7月の非農業部門雇用者数が市場予想を下回り、前月分も下方修正されたことで米金利が低下。ドル円は141円55銭まで売られる。ドル安の流れからユーロドルも1.10台を回復。株式市場は上昇して始まったが、午後に失速。主要3指数は揃って下落。債券価格は大幅に上昇。長期金利は4.03%台に低下。金は4日ぶりに反発。原油は続伸し、一時は83ドル台に、サウジなど「OPEC」の減産継続が材料に。

マーケット情報

8月失業率 → 3.6%

8月非農業部門雇用者数 → 18.7万人

8月平均時給 (前月比) → 0.4%

8月平均時給 (前年比) → 4.4%

8月労働参加率 → 62.6%

ドル/円 141.55 ~ 142.90

ユーロ/ドル 1.0935 ~ 1.1042

ユーロ/円 155.76 ~ 156.63

NYダウ -150.27 → 35,065.62ドル

GOLD +7.30 → 1,976.10ドル

WTI +1.27 → 82.82ドル

米10年国債 -0.141 → 4.034%

本日の注目イベント

日 6月景気先行一致指数(CI)(速報値)

日 6月景気一致指数(速報値)

中 中国7月外貨準備高

独 独6月鉱工業生産

米 6月消費者信用残高

米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、FRBのイベントで講演

米 ボウマン・FRB理事、パネル討論に参加

 7月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数(NFP)が市場予想を下回ったことでドル円は142円台後半から141円台半ばまで下落しました。先週にも触れましたが、結果的には6月の雇用統計発表後と全く同じ動きでした。6月は民間の雇用統計である「ADP雇用者数」が市場予想を大きく上回り、「雇用統計」にも期待が膨らみましたが、結果は市場予想には届かなくドル円は大きく売られ、その後137円台までドル安が進むきっかけになりました。7月分も「ADP雇用者数」では市場予想の「19万人」に対して「32.4万人」と、大きく上回りましたが、本番の「雇用統計」では「20万人」の予想でしたが、結果は「18.7万人」でした。さらに6月分も「18.5万人」に下方修正されています。

 FRBによる追加利上げ観測が後退したことで、米債券が買われ長期金利は大きく低下し、ドル円も素直にこの流れに反応したようです。ただ米株式市場は依然調整局面が続いており、雇用統計の結果は株式市場にプラスでしたが、その後のFRB高官による利上げ継続発言とアップル株の大幅下落が市場全体のセンチメントを悪化させたようです。ボウマンFRB理事はコロラド州のイベントで、「インフレ率をFOMCの目標である2%に押し下げるには、追加利上げが必要になる可能性が高い」と発言しています。ボウマン氏はさらに、「最近のインフレ鈍化は好ましいが、追加利上げとフェデラル・ファンド(FF)金利がいつまで景気抑制的な水準にとどまる必要があるのかを検討する際、私はインフレ率が2%の物価目標に向って有意な下降線をたどっているという一貫した証拠を探すつもりだ」と話し、「個人消費鈍化と労働市場環境緩和の兆しにも注意する」と説明しています。(ブルームバーグ)まさに労働市場の変調が見られた今回の結果を意識して述べた言葉だと受け止められます。5月までは驚異的な好調さを見せていた米労働市場は、6月、7月と2カ月連続でこれまでとは異なる結果を示しています。この傾向が続くようなら、さすがに驚くほど好調だった労働市場にも、ようやく景気抑制政策の効果が見え始めたのかもしれません。8月分の雇用統計が今から楽しみです。

 米インフレ率が順調に低下していることを受け、株式市場ではダウが「13連騰」するなど、ようやく米株式市場が復活の兆しをみせ、資金も流入する好循環が見られましたが、そこに冷水を一気に浴びせかけたのが格付け会社「フィッチ・レーティングス」による米国債の「格下げ」でした。当初はその影響は限定的と見られましたが、米財務省が国債の発行を増やすとの発表も加わり、株式と債券が大きく売られました。米長期金利は先週一時4.195%まで上昇する局面もありました。フィッチによる格下げに対しては多くの米識者や経営トップ、専門家などが格下げを非難し、米国債の安全性を強調する発言を行っていましたが、世界有数の資産運用会社「ブラックストーン」のシュワルツマンCEOはそれらとは異なる意見を述べています。シュワルツマン氏は、「残念ながら数字が正当化する」と述べ、「世界的な金融危機以降、われわれは債務を爆発的に増やして来た。財政規律が緩んでいるようだ。」と述べ、その上で、「世界で危機が起きれば米国債にマネーが流入するが、財政規律を伴わなければ、永遠には続かない」と警鐘を鳴らしていました。米国債の信頼性が失われれば、金利が上昇し、米政府はその発行額が大きいだけにそれらの利払い負担も大きくなり、利払いのためにさらに国債を増発しなくてはならない、「悪循環」に陥る可能性もあります。

 大きな値動きを見せるドル円ですが、これでドルの上値もやや重くなる一方、下値もまだどんどん攻める状況でもありません。ようやく140-145円のレンジ内に落ち着くのではないかと見ていますが、どうでしょう。

 本日のドル円は141円~142円50銭程度と予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)

・今日のアナリストレポート

https://info.kabushiki.jp/rd/gaitameonline_academy01.htm

・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧

https://info.kabushiki.jp/rd/gaitameonline_calender.htm

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