松屋R&D・後藤秀隆社長に聞く:国内外で本格的な成長路線へ

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2023/8/29 9:00

 松屋アールアンドディ(=松屋R&D、7317)は縫製工程を自動化する独自技術に強みを持つ。それを活用して、縫製自動機の開発・製造・販売のほか、血圧計センサーのカフ(腕帯)、カーシート、エアバッグなどの製造・販売を行う。コロナ禍が一区切りついたことで、今3月期は各事業が本来の成長性を取り戻してきた。それとともに、今後はより一層のグローバル展開を進め、成長性の強化に取り組む構えだ。同社の現状と今後について後藤秀隆社長に聞いた。

 ――今2024年3月期の第1四半期(4~6月)決算は好調で、連結売上高19億2600万円(前年同期比34.3%増)、営業利益2億2600万円(同2.2倍)と大幅な増収増益を達成し、売上高、利益とも過去最高を更新しました。

 「前年同期は中国のロックダウン(都市封鎖)、半導体不足の影響で苦戦した反動もあって、第1四半期は売上高、利益とも大きく伸びました。振り替えると、コロナ禍で2年間をロスしたようなものですが、コロナや半導体不足などの問題はほぼ解消され、ようやく本格的な成長路線に戻ってきたという状況です。現段階で通期業績予想の売上高74億円(前期比3.3%増)、営業利益7億3000万円(同19.3%増)は据え置きですが、メディカルヘルスケア事業、セイフティシステム事業など当社の事業の潜在的な成長性は高く、売上高、利益とも第1四半期の段階で計画を上回るペースで推移しています」

 ――国内だけでなく、海外事業も拡大機運にあります。

 「特にインドが活気づいており、インド向けにエアバッグ用設備など大型の受注が増えています。こうした状況は今年いっぱい続くとみています。そのほかの国では、中国は横ばいですが、ポーランド、ルーマニア、チュニジア、メキシコなどでも大きな需要があります。現在は世界的に人手不足が深刻化しており、賃金も上昇傾向にあり、機械化、自動化のニーズとともに、当社の機械のニーズも拡大中です。円安傾向と売りやすい状況にあることもチャンスといえるでしょう。今後、海外志向の強い社員の採用を強化し、さらなる拡大に努めていきます」

 ――メディカルヘルスケア事業のリハビリ用ロボットについて教えてください。

 「リハビリ用ロボットはポーランドのグローバル医療機器メーカーEGZOTech(EGZO)社と日本総代理店契約を締結し、EGZO社のEMG(表面筋電図)を利用した脳梗塞(こうそく)の多目的リハビリ用ロボットの製造、販売を行っています。新規事業として注力し、病院やリハビリセンターなどにテスト出荷している段階です。楽しみながらリハビリできるという面もあり、他社のロボットと比較して患者の評判はよく、年内にも売上を計上できそうな状況です。大手医療機器メーカーから代理店になりたいとの打診もあり、今後、販売戦略を固め、来期以降には販売拡大を目指します」

 ――新規事業はどんな状況でしょうか。

 「ドローンについては、欧州、中国においてドローン用エアバッグに関する特許を正式に取得しました。以前は配達用ドローンの開発に取り組んでいましたが、現在は路線を変更し、原発内や工事現場など危険な場所のチェック用として開発を進めています。大手メーカーから引き合いもあり、1年ぐらいで形にしたいと思っています。そのほか、3D(3次元)縫製機の開発は順調で、カーシートメーカーから見積もりを取る段階にあります」

 ――ベトナム工場はいかがですか。

 「当社が新規に購入した土地に、従来の5工場をすべて集約した新工場を建設しました。計画通り7月に完成し、9月8日の稼働開始を予定しています。これまでは土地、建物ともレンタルでしたが、自社工場を保有することで、固定資産の減価償却費や借入の金利を加味しても1億円以上のコスト削減が見込めます。物価高で賃貸料が上がっているため、実質的にはそれ以上のコスト削減効果が出てくる可能性もあります。今期(24年3月期)の後半にはコスト削減効果が明確に表れてくることになるでしょう。また、新工場には他社でも見られない独自の生産管理システムを導入し、不良率を大きく減らしてさらなるコスト削減を図っていきます。そのほか、新規の自動機を導入しており、工場をいわばショールーム化し、今後のビジネスにつなげていく考えもあります」

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