【為替本日の注目点】米第2四半期GDPは下方修正
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
ドル円はNYの朝方に再び145円台半ばまで下げたが、その後上昇。ADP雇用者数とGDP改定値の下振れが相次ぎ発表され146円36銭までドルが買われる。ユーロドルは大幅に反発。スペインのインフレが加速したことを受け、ユーロドルは1.0945近辺まで上昇。ユーロ円も159円76銭前後まで急伸。株式市場は3指数が揃って4日続伸。経済指標の下振れが相場を支える。ナスダックは1万4千ポイント、S&P500は4千5百ポイントと、それぞれ大台を回復。債券はほぼ横ばい。金は4日続伸。原油もハリケーン「イダリア」がフロリダ州に上陸したことを手掛かりに5日続伸。
マーケット情報
8月ADP雇用者数 → 17.7万人
4-6月GDP(改定値) → 2.1%
7月中古住宅販売成約件数 → 0.9%
ドル/円 145.56 ~ 146.36
ユーロ/ドル 1.0875 ~ 1.0945
ユーロ/円 158.93 ~ 159.76
NYダウ +37.57 → 34,890.24ドル
GOLD +7.90 → 1,973.00ドル
WTI +0.47 → 81.63ドル
米10年国債 -0.006 → 4.114%
本日の注目イベント
日 7月鉱工業生産
中 8月中国製造業PMI
中 8月中国サービス業PM
独 独8月雇用統計
欧 ユーロ圏8月消費者物価指数(速報値)
欧 ユーロ圏7月失業率
欧 ECB議事要旨(7月分)
米 新規失業保険申請件数
米 7月個人所得
米 7月個人支出
米 7月PCEデフレータ(前月比)
米 7月PCEデフレータ(前年比)
米 7月PCEコアデフレータ(前月比)
米 7月PCEコアデフレータ(前年比)
米 8月シカゴ購買部協会景気指数
南ア ボスティック・アトランタ連銀総裁、パネル討論に参加(南アフリカ)
米 コリンズ・ボストン連銀総裁講演
加 カナダ4-6月期経常収支
前日の求人件数に続き、昨日発表された経済指標も予想を下回る結果となり、9月のFOMC会合での政策金利据え置き観測がさらに高まってきました。「悪いニュースは良いニュース」とばかり、株式市場では「主要3指数が揃って4日続伸」し、145円台半ばまで売られたドル円は146円36銭まで反発しています。米長期金利がほぼ横ばいの中、ドルが買い戻されたというより「円が売られた」格好でした。スペインのインフレが加速したことで、ユーロドルでは「ドル安・ユーロ高」が進み、ドル円とは全く逆の動きになっています。ユーロ円の買いも活発になったようで、ユーロ円は2008年8月以来となる159円76銭近辺まで買われています。
FRBと日銀の金融政策の差が意識される中、昨日はECBとの差も意識されたようです。ECBが9月の会合で利上げするかどうかは五分五分と見ていましたが、昨日発表されたドイツの8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で「6.4%」と、市場予想を上回り、スペインではドイツほどインフレ率は高くないものの、8月は「2.4%」と7月の「2.1%」を上回り、2カ月連続でインフレが加速していました。ラガルド総裁は先週末のジャクソンホールでの講演では、9月の利上げについて「インフレ率を目標値へ下げるため必要に応じて金利を高水準に設定し、必要な限りその水準を維持する」と述べるにとどまり、ヒントを与えてはくれませんでしたが、オーストリア中銀総裁をはじめ、ドイツ、オランダ中銀総裁らはさらなる利上げに前向きの姿勢を見せています。
一方、植田日銀総裁は年末に向かってインフレ率が低下するとの考えを基に、現行の緩和政策を維持することを明確に述べています。ただその認識も盤石ではありません。日銀審議委員の田村氏は30日、釧路市で開かれた地域金融経済懇談会で講演を行い。「まだ、賃金や物価動向を謙虚に見つめていくべき局面にあり、現時点において、金融緩和を継続することが適当」と述べながらも、「想定以上に物価が上振れる可能性も否定できない」と語っていました。日銀のインフレ認識や現行の金融緩和策継続に対する厳しい意見も出ています。日銀出身で、日銀では調査統計局にも身を置いたこともあり、現在日本のインフレ研究では第一人者の渡辺努東大大学院教授は今月28日のブルームバーグとのインタビューで、「日銀の物価見通しは金融政策の正常化への思惑を招かないように実体よりも低く抑えられている」と指摘しています。「物価の方はそれほど『強い数字は出せないという変なバイアス』がかかってしまって、低い数字になっている」と語っています。その上で、渡辺氏は、「もし政策の先行きについて誤解を招くのであれば、そうではないというメッセージをきちんと説明していくのが王道。『うその数字を出して、それによって政策を正当化しようというのは本筋から大きく外れている』」と、手厳しい意見を述べています。
日銀は直近で消費者物価見通しを以下のように発表しています。
2023年度:2.5%上昇(1.8%上昇)
2024年度:1.9%上昇(2.0%上昇)
2025年度:1.6%上昇(1.6%上昇)
数字は対前年度比で、かっこ内は4月時点での予想です。
これに対して渡辺氏は、23年度が2.7~2.9%、24年度と25年度も2.1%~2.2%を超える水準になるとの見通しを示しています。また、渡辺氏は24年春闘での賃上げが重要だとの認識を示し、「24年春闘の賃上げ目標が5%を超える水準になる可能性がある」とし、「24年春闘の賃上げ目標が5%に達しなければ、少なくとも植田総裁のいる間は、日銀は短期金利を動かすことはできなくなる」とも語っています。もしこの通りなら、植田総裁は今年4月に就任したばかりですから、2028年まではマイナス金利が続くことになりますが・・・。さらに渡辺氏はイールドカーブコントロール(YCC)政策については、「今となっては邪魔者以外の何物でもない」と一刀両断。現在の為替動向に関しても、「物価目標の達成によって短期金利の修正に至れば、金利差の面で円安プレッシャーは変わっていくので、円安は止まる」とし、「政府は為替介入するべきではない」との考えを示しています。全体を通して、何か目の前の霧が晴れたような感覚になるのは、筆者だけではないのではと思います。
本日のドル円は145円50銭~146円80銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
・今日のアナリストレポート
https://info.kabushiki.jp/rd/gaitameonline_academy01.htm
・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧
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