<新興国eye>ポーランド中銀、0.25ポイント追加利下げ―利下げは2会合連続

新興国

2023/10/5 8:50

 ポーランド中銀は4日の金融政策委員会で、景気を支援するため、主要政策金利の7日物レファレンス金利を0.25ポイント引き下げ、5.75%とすることを決めた。市場の一部は据え置きを予想していたが、大方の予想は0.25ポイントの利下げだった。ただ、一部では0.50ポイントや0.75ポイントの利下げが予想されていた。

 また、中銀はロンバート金利と再割引金利、公定歩合、預金金利もそれぞれ6.25%、5.80%、5.85%、5.25%と、いずれも0.25ポイント引き下げた。

 市場では総選挙(10月15日)を間近に控える中、中銀は3期目の政権維持を目指す与党の「法と正義」党の意向を反映し、また、最近の景気後退リスクの高まりを受け、金融緩和を一段と強めると予想していたが、前回9月会合で0.75ポイントの大幅利下げを決めたあと、通貨ズロチが急落したため、今回の会合では小幅利下げの予想が強まっていた。

 中銀はコロナ禍後のインフレ急加速を受け、21年10月会合で9年5カ月ぶりに利上げに転じ、22年9月会合まで計11会合連続で利上げを継続。利上げ幅が計6.65ポイントに達したことから、利上げの効果を見るため、翌10月会合で据え置きに転じ、7月会合まで10会合連続で据え置いたが、前回9月会合で3年ぶりに利下げに転換した。これで利下げは2会合連続、利下げ幅も計1.00ポイントに達した。

 中銀は声明文で、追加利下げを決めたことについて、前回会合時と同様に、「最近の経済指標を見ると、国内需要の低迷により、コスト圧力が低下。また、世界経済の低迷でインフレ圧力は低下している」とした上で、「これらの状況と金融政策のタイムラグ(時間差)を考慮し、金利を調整した」とし、依然として景気下振れリスクがあることや、過去の累積的な利上げ政策の影響が景気とインフレに伝わるまでのタイムラグを踏まえ、追加利下げを決めたとしている。

 景気見通しについては、中銀は前回会合時と同様、「世界経済が低迷する中、ポーランドでも経済活動が鈍化した。8月の小売売上高と鉱工業生産は年間ベースで減少。失業率は低いが、企業部門での雇用の伸びが止まった」とし、引き続き、経済の先行きに強い懸念を示している。

 最新の6月経済予測では、23年の成長率の予想レンジを0.2%減-1.3%増、24年は1.4-3.3%増、25年は2.1-4.4%増と、いずれも前回3月予測を下方修正しており、市場では、今後、深刻な景気低迷のリスクが強まると見ている。

 他方、インフレ見通しについては、9月のインフレ率(全体指数)が前年比8.2%上昇と、8月の同10.1%上昇を下回り、2月の18.1%上昇をピークに伸びが7カ月連続で減速したとした上で、中銀は前回会合時と同様、「経済活動の低迷と相まって、今後数四半期、国内CPI(消費者物価指数)で見たインフレ率の低下を後押しする」と見ている。

 6月経済予測では、23年のインフレ見通しは11.1-12.7%上昇、24年は3.7-6.8%上昇、25年は2.1-5.1%上昇と予想、インフレ率は25年から物価目標(2.5%上昇プラス・マイナス1.0ポイント)に収束すると予想している。しかし、市場では次の経済予測ではインフレ率の鈍化はさらに加速すると見ている。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「マクロ経済と金融の安定と、中期的にインフレ率を物価目標に収束させるために必要なすべての措置を講じる」とした上で、「今後の政策決定は、今後のインフレと経済活動の見通しに依存する」とし、インフレの高止まりが長期化した場合、利上げ再開の可能性に含みを残した。

 また、中銀は通貨ズロチ相場について、前回会合時と同様、「ズロチ相場の上昇により、インフレ率の低下はさらに加速する。理事会の評価では、これ(ズロチ高)はポーランド経済のファンダメンタルズと一致する」とした上で、ズロチ安になった場合、「外為市場で(ズロチ買いの)介入を実施する」としている。

 次回の会合は11月8日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 上場EM債<1566.T>、上場MSエマ<1681.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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