永濱利廣のエコノミックウォッチャー(43)=9月短観から占う業績上方修正セクター
9月短観の大企業調査は、8月下旬~9月下旬にかけて資本金10億円以上の約1900社にヒアリングしたもの。企業の業績の先行指標として注目される。
製造業・加工業種と非製造業に期待
同調査(全産業、除く金融)の売上高は、2023年度は上期、下期とも若干の下方修正となった。一方、経常利益は上期を中心に大幅に上方修正されている。
製造業のうち素材業種だけは経常利益が下方修正された。このため、11月に発表ピークを迎える四半期決算では、製造業の加工業種と、非製造業で業績見通しを引き上げる動きが目立ちそうだ。
業種別では、23年度は「物品賃貸」「卸売」「電気・ガス」「鉱・採石・砂利採取」「繊維」「石油・石炭製品」「非鉄金属」「生産用機械」を除く業種が増収を計画し、売上高の上方修正率が最も大きいのが「対個人サービス」だ。その後は「その他製造」「鉱・採石・砂利採取」「建設」「自動車」と続く。
対個人サービスは、インバウンド(訪日外国人観光客)の回復や新型コロナウイルスの指定感染症見直し後初の夏到来によるレジャー需要の増加が寄与したとみられる。一方、その他製造や自動車は、供給網の改善に加えて円安が追い風になったと考えられる。
食料品はコスト削減寄与か
鉱・採石・砂利採取は、鉄鉱石など一部資源価格が比較的堅調に推移したことが関係しているとみられる。建設は、これまでのコスト増の価格転嫁が遅れて反映されたことが推察される。
続いて、経常利益の計画の上方修正が期待される業種をみていこう。最大の修正率となったのが「電気・ガス」で、これは、電力業金の値上げや原発再稼働による燃料費削減効果による。
鉱・採石・砂利採取は経常利益の修正率も電気・ガスに次いで高い。「運輸・郵便」は、やはりインバウンド増とリオープン(経済活動再開)の効果が大きいようだ。
また、それに続く「繊維」や「食料品」は、いずれも売上高の計画が下方修正された半面、経常利益は上方修正となっている。これにはコスト削減効果が寄与したとみられる。特に食料品は、10月から政府の小麦売り渡し価格が久しぶりに1割以上値下げになる影響が大きいと思われる。
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【プロフィル】永濱利廣…第一生命経済研究所・首席エコノミスト/鋭い経済分析を分かりやすく解説することで知られる。主な著書に「経済指標はこう読む」(平凡社新書)、「日本経済の本当の見方・考え方」(PHP研究所)、「中学生でもわかる経済学」(KKベストセラーズ)、「図解90分でわかる!日本で一番やさしい『財政危機』超入門」(東洋経済新報社)など。
(写真:123RF)
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