HCH、初めての中期計画を推進し飛躍目指す

ニュース

無料

2023/11/24 9:00

 ヒューマンクリエイションホールディングス(=HCH、7361)は前9月期、顧客の旺盛なDX(デジタルトランスフォーメーション)需要を着実に取り込み、過去最高業績を連続更新した。今後、さらなる飛躍を図るため、今期から初めての中期経営計画を推進している。株主還元の拡大も実施する。

株主還元に注力、割安感強く株価の見直し必至

 同社はシステム開発において、最上流工程であるコンサルティングから保守、運用までワンストップで手掛ける。コンサルティングだけでなく、ITエンジニアの派遣にも対応し、企業のデジタル課題に対して最適な解決手段をトータルに提供する点が強み。DX進展を追い風に業績の高成長が続いており、前期の連結売上高は64億8600万円(前々期比11.8%増)、営業利益は6億9700万円(同28.0%増)となった。

 今期からは「答えを創る次世代の経営課題コンサルティング企業」の目標に向け、創業以来初めての中期経営計画を推進中だ。前期から続いてシステム開発の上流であるコンサルティング・受託分野の拡大に注力することで、コンサルティング・開発・保守・運用の一連の業務を自社グループ内で完結できる「一気通貫」ビジネスモデルのより一層の精緻(せいち)化を図る。これにより、経営課題コンサルティング企業へ変貌(へんぼう)し、将来に向けた成長力の強化を目指す。

 今期業績は売上高77億8500万円(前期比20.0%増)、EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却費)8億3900万円(同2.5%増)、営業利益7億1700万円(同2.8%増)を見込んでいる。売上高は高成長が続くものの、先行投資を強化するため利益面の成長は鈍い印象だ。しかし、投資が再成長につながることで、中期計画の最終年度である2026年9月期には売上高110億円、EBITDA12億2500万円と大幅な飛躍を目指す。なお、同社の業績予想はこれまで保守的だったことから、特に利益面が上ブレする可能性は十分にあろう。

 先行投資は優秀な人材の獲得・育成に加えて、既存従業員への還元も行う。中でも、プロジェクトリーダーの育成により注力していく方針。同社には、ある程度の経験を積んだ人材をサブリーダーとし、リーダーの下でさらなる経験を積むことにより、新しいリーダーを育成するという流れがある。こうした流れを強化し、中期経営計画ではさらなるリーダー育成に取り組む構えだ。需要が旺盛な状況が続いているため、リーダー人材の増加がさらなる新案件の獲得、売上増につながり、それがまた新しいリーダーの育成につながるという、好スパイラルの強化を目指す。

 また、同社は他社との協業、積極的なM&A(企業の合併・買収)で成長力を強めてきた経緯があり、2月の日鉄ソリューションズ(=NSSOL、2327)、4月のアドバンスト・メディア(=AMI、3773)との資本・業務提携は同社業績の高成長に大きく効果を上げた。また、子会社6社のうち4社をM&Aで取得しており、これまで1度も減損したことはなく、グループの成長につながっている。引き合いは多くあり、今後も積極的なM&Aを実施する意向で、中期経営計画でも年間2億~4億円の増収効果を視野に入れている。

 一方、中期計画期間においては利益の再投資による株主価値の向上を図るだけでなく、事業環境、業績・財務状況などを総合的に勘案し、株主還元に注力する方針も打ち出す。「総還元性向は純利益の30%以上とし、増配を継続するとともに、機動的な自己株式取得を実施する」(同社の富永邦昭社長)考えという。総還元性向30%以上と明言していることに加え、純利益予想、配当予想を考慮すると、かなりの額が自己株買いに使われることになり、それが今後の株価の下支えにつながることになろう。さらに、ここ数年の同社の出来高の推移をみると自己株式取得は一任取引となるため、自己株式取得の公表後は短期間のうちに買い付けが終了する可能性が高い。

 同社の株価は年初来高値2999円(8月31日)を付けた後に下落した。直近では2200円台の推移となっており、PERは8倍台にとどまる。競合企業のPERを見ると、シグマクシス・ホールディングス(6088)19倍、アルトナー(2163)20倍、ベイカレント・コンサルティング(6532)28倍、マネジメントソリューションズ(=MSOL、7033)38倍などで、同社株の割安感が際立っており、業績成長期待を背景に株価の見直しは必至だ。中・長期的には競合4社の平均であるPER28倍程度が株価の目標になりそうだ。

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ