<新興国eye>インドネシア中銀、予想通り金利据え置きーインフレ鈍化とルピア下落圧力緩和で

新興国

2023/11/24 8:46

 インドネシア中央銀行(BI)は23日の理事会で、インフレ低下と通貨ルピアの下落圧力の緩和を受け、主要政策金利の1週間物リバースレポ金利を高水準6.00%に据え置くことを決めた。市場の大方の予想通りだった。ただ、一部では0.50ポイントの利上げを予想していた。

 また、中銀は過剰流動性を吸収するための翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も5.25%、翌日物貸出ファシリティー金利も6.75%と、いずれも据え置いた。

 中銀はインフレ加速を受け、22年8月会合で3年9カ月ぶりに利上げに転換、23年1月会合まで6会合連続で金利を引き上げたが、利上げ幅が計2.25ポイントに達したことを受け、これまでの累積的な利上げ効果を見るため、2月会合で22年7月以来7カ月ぶり金利据え置きに転じ、9月会合まで9会合連続で据え置いた。前回10月会合で9カ月ぶりに利上げを再開したが、今回は据え置きに戻した。

 中銀は会合後に発表した声明文で、金利据え置きを決めたことについて、「世界的な不確実性の増大による影響からルピア相場を安定させる政策を強化するため、また、輸入インフレへの影響を緩和するため、先制的かつ前向きな措置だ」とした上で、「これにより、インフレ率が23年は前年比2.0-4.0%上昇、また、24年は同1.5-3.5%上昇の物価目標の範囲内に引き続き抑制される」としている。

 前回10月会合で利上げを再開したのはイスラム組織ハマスとイスラエルの戦争勃発(10月7日)により、原油価格が高騰、インフレ上昇懸念が再燃したことが背景。今回の会合では中東紛争への懸念が緩和した。

 インフレについては、10月のインフレ率が2.56%上昇と、9月の同2.28%上昇をやや上回ったが、「インフレ率は依然として低く、物価目標の範囲内(2.0-4.0%上昇)にある」とし、インフレ上振れリスクが後退したと見ている。中銀は、「24年のインフレ率を1.5-3.5%上昇の物価目標の範囲内に確実に抑制する」としている。

 ルピア相場については「安定化政策に沿って抑制されている」としている。10月末時点に比べ、対ドルで1.99%上昇したが、年初来では22年12月末時点から0.04%安と、安定している。中銀も、「FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げサイクルは終了、長期にわたって高止まりする可能性が高い」と見ていることも金利据え置きの要因となった。

 また、今回の会合でも中銀は23年の成長率目標を4.5-5.3%増に据え置いた。その上で、「24年も経済は強い消費者信頼感と総選挙の好影響、国家戦略プロジェクトの継続によって拡大する」と予想している。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「持続可能な経済成長を支援するため、流動性や決済システム、金融安定化に関する政策のポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)を強化する」とし、これまで通り、ルピア相場の安定のため、スポット市場での介入や、ルピアを決済に使う為替フォワード(先渡し)取引である「DNDF(ドメスティック・ノン・デリバラブル・フォワード)市場での介入を継続するとしている。

 また、中銀が保有国債を裏付けとするルピア建ての証券(BIRS)と、11月17日から導入した外貨建て証券(BIFCS)の発行を通じ、短期金融市場を強化、海外からのポートフォリオ投資の魅力を高めていくとしている。これは外資の流入を高めることでルピア防衛を強化するのが狙い。

 中銀は7月会合で一般の商業銀行やシャリア銀行(イスラム法に則って銀行業務が行われるイスラム系銀行)などを対象とした流動性強化政策(KLM)を決め、10月1日から銀行が中銀に積み立てる預金準備率を引き下げたが、今回の会合でもこのKLMの有効性を確認、今後もこの有効性を高めるとしている。これにより、11月時点で138兆ルピアの流動性を創出した。流動性の増加は銀行融資の拡大につながるため、市場では中銀は利下げに代わって信用の増加を選択したと見ている。

 次回会合は12月20-21日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、アセアン50<2043.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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