<新興国eye>インドネシア中銀、予想通り金利据え置きーインフレ緩和とルピア相場の安定を受け

新興国

2023/12/22 8:40

 インドネシア中央銀行(BI)は21日の理事会で、インフレ緩和と通貨ルピア相場の安定を受け、主要政策金利の1週間物リバースレポ金利を高水準6.00%に据え置くことを決めた。市場の予想通りだった。

 また、中銀は過剰流動性を吸収するための翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も5.25%、翌日物貸出ファシリティー金利も6.75%と、いずれも据え置いた。

 中銀はインフレ加速を受け、22年8月会合で3年9カ月ぶりに利上げに転換、23年1月会合まで6会合連続で金利を引き上げたが、利上げ幅が計2.25ポイントに達したことを受け、これまでの累積的な利上げ効果を見るため、2月会合で22年7月以来7カ月ぶり金利据え置きに転じ、9月会合まで9会合連続で据え置いた。10月会合で9カ月ぶりに利上げに踏み切ったが、前回11月会合で据え置きに転じ、これで据え置きは2会合連続となる。

 中銀は会合後に発表した声明文で、金利据え置きを決めたことについて、前回会合時と同様、「世界的な不確実性の増大による影響からルピア相場を安定させる政策を強化するため、また、インフレ率を24年の物価目標である前年比1.5-3.5%上昇(中央値2.5%上昇)の範囲内に抑制するための先制的かつ前向きな措置だ」としている。

 インフレについては、11月のインフレ率が前年比2.86%上昇と、10月の同2.56%上昇や9月の同2.28%上昇をやや上回ったが、中銀は、「インフレ率は依然、抑制されており、物価目標の範囲内(2-4%上昇)にある」とし、インフレ上振れリスクが緩和したと見ている。その上で、中銀は、「24年のインフレ率を1.5-3.5%上昇の物価目標の範囲内に確実に抑制する」としている。

 ルピア相場については11月時点に比べ、対ドルで0.44%上昇、年初来でも22年12月末時点から0.37%安と、安定しており、中銀は、「これまでのところ、インドネシアを含む新興市場国では資本フローが戻り始めており、為替相場下落圧力が軽減されている」とし、ルピア相場の下落懸念が緩和したと見ている。最近のルピア相場の上昇は、FRB(米連邦準備制度理事会)が12月13日の金融政策決定会合で、金融緩和方向にシフトしたことが背景。ただ、中銀は、「将来的には地政学的緊張の継続や中国経済の低迷、先進国の依然として高い政策金利と債券利回りなど多くのリスクが世界経済の不確実性を再び高める可能性がある」として、警戒感を緩めていない。

 また、景気見通しについては、中銀は今回の会合でも23年の成長率目標を4.5-5.3%増に据え置いた。その上で、「24年も経済は強い消費者信頼感と総選挙の好影響、国家戦略プロジェクトの継続によって拡大する」とした上で、24年の成長率見通しを4.7-5.5%増に据え置いた。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「持続可能な経済成長を支援するため、金融(市場流動性)やマクロ・プルーデンスな政策(金融システムの安定を目指した政策)、決済システムのポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)を強化する」とし、これまで通り、ルピア相場の安定のため、スポット市場での介入や、ルピアを決済に使う為替フォワード(先渡し)取引である「DNDF(ドメスティック・ノン・デリバラブル・フォワード)市場での介入を継続するとしている。

 また、中銀が保有国債を裏付けとするルピア建ての証券(BIRS)と、11月17日から導入した外貨建て証券(BIFCS)の発行を通じ、短期金融市場を強化、海外からのポートフォリオ投資の魅力を高めていくとしている。これは外資の流入を高めることでルピア防衛を強化するのが狙い。

 中銀は景気支援策として、7月会合で一般の商業銀行やシャリア銀行(イスラム法に則って銀行業務が行われるイスラム系銀行)などを対象とした流動性強化政策(KLM)を決め、10月1日から銀行が中銀に積み立てる預金準備率を引き下げたが、今回の会合でもこのKLMの有効性を確認。中銀は、「KLMにより12月時点で163兆3000億ルピアの流動性を創出した」とし、その上で、「持続可能な経済成長を支援するため、今後もこの有効性を高める」としている。流動性の増加は銀行融資の拡大につながるため、市場では中銀は利下げに代わって信用の増加を選択したと見ている。

<関連銘柄>

 アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、アセアン50<2043.T>

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