(再送)<年末年始特集>暗号資産市場の2023年の振り返りと2024年の展望(2)
2023/12/29 17:15
―24年の暗号資産市場:BTCの半減期、ETHのアップデート、XRPの裁判など―
速ければ年明け1月にもSEC(米証券取引委員会)がビットコインの現物に連動したETF(上場投資信託)を承認するとみられている。SECは長きにわたって現物のETFを却下してきたため、機関投資家の需要が抑制されてきたとの指摘もあり、承認されれば大手の機関投資家を呼び込み、ビットコインをはじめとした主要な暗号資産にとって追い風になる。一方、現在の暗号資産市場にある資金がそのままビットコインETFに流入し、その場合は多くの暗号資産が資金流出により下落するとの指摘もある。現在の暗号資産取引所にとっては取引手数料が収益の源泉となっているが、ビットコインETFに投資家の資金が向かうと手数料収入が減少し、暗号資産市場全体に悪影響を及ぼす恐れもある。
ビットコインについては、3月から4月ごろに予定されている「半減期」がひとつの注目ポイントとなる。半減期はマイニングによる報酬が半分になるシステムで、ビットコインでは約4年に1度行われる。発行量を制限することで急激な希薄化を防ぐ目的があり、希少性が高まるとして半減期前後は上昇トレンドを形成する傾向にある。これまでの半減期前後をみると、その直前や直後に短期的な動きはみられても、大きなトレンドを形成するほどではなかったが、数カ月後には数倍以上に上昇している。今回は現物型ビットコインETFの承認期待が高まっている分、織り込まれつつあるため、上昇トレンドを形成するのに時間を要する可能性はあるものの、中長期的には上昇を期待したい。
イーサリアム(ETH)は、23年後半をめどに導入が予定されていた大型アップデート「Dencun」が延期されているが、1月に初回テストネット実装が予定され、早ければ2月にはメインネットに実装されるとみられている。トランザクション手数料の削減やネットワーク全体の効率性向上などの改善が期待されており、無難にアップデートを通過できれば安心感から買いに弾みが付く可能性もある。
XRPは、23年夏の有価証券か否かをめぐる裁判で、個人向け販売について有価証券ではないとの判断が下され、これに対してSECが中間控訴(一審の裁判が完全に終わる前に行う控訴)したものの、これは棄却されている。SECは現時点で完全に負けを認めたわけではないが、米国の民事訴訟における控訴審で一審判決が取り消される確率は低く、リップルの主張が認められたまま裁判が終結を迎えれば、XRPや主要暗号資産だけでなく、ほかのアルトコインにとってもプラスかもしれない。
外部環境では、主要な各国中銀による金融政策の動向も注目だ。24年にFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げサイクルが終了し、一部では利下げの可能性も指摘されていることから、リスク許容度の拡大も暗号資産市場にとってプラスとなる。
―CBDCの動き―
CBDC(中央銀行デジタル通貨)も導入に向けた動きが活発化しそうだ。ブラジル中銀が24年に導入を予定しているほか、ロシア中銀は24年にかけてパイロットプログラムでテストを予定。韓国中銀も24年内に10万人規模の試験運用を開始する計画だ。EU(欧州連合)諸国の中銀もCBDCなどの決済用新技術の検討を開始している。
また、日銀は現時点でCBDCを発行する計画はないとしているが、CBDCのニーズが高まっていく可能性を指摘。実証実験と制度設計面の検討を進めていくとしている。
CBDCは決済の利便性のほか、匿名性の高い現金とは異なり、利用者の足跡を追えることから、マネーロンダリング対策としても有効となる。一方、オフライン状態では使えず、セキュリティー面での懸念もあり、こうした面での整備が急がれる。
提供:ウエルスアドバイザー社
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