永濱利廣のエコノミックウォッチャー(45)=短観から探る1月決算発表の上方修正業種

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2024/1/5 10:30

 1月下旬から本格化する日本企業の四半期決算発表に先立ち、日銀短観(2023年12月調査)の大企業調査からその動向を占い、今年度の収益計画の上方修正が見込まれる業種を予想してみたい。

自動車や石油・石炭製品に期待

 短観の大企業調査は、法人企業景気予測調査と同様に、企業業績の先行指標として注目される。12月調査の対象の大企業(資本金10億円以上の約1900社、調査期間は23年11月上旬~12月上旬)の半期別計画は、全産業(除く金融)ベースで今年度は売上高・経常利益ともに下期は下方修正となった。一方、通期ではいずれも見通しが引き上げられており、実際に同様の修正に踏み切るケースが増えそうだ。

 そうした中で、大幅な増額が想定される業種を探ってみる。まず売上高は、「自動車」の上方修正率が7.7%で最大となった。次に大きいのが修正率5.8%の「石油・石炭製品」で、以下「宿泊飲食サービス」「鉱・採石・砂利採取」「金属製品」と続く。

 自動車は、半導体などの部品不足の解消に伴うで増産に加え、円安や値上げも効いていると推察される。また、石油・石炭製品や鉱・採石・砂利採取、金属製品は、夏場以降に進んだ資源価格の上昇や、原材料高を受けた製品価格の値上げが寄与したとみられる。一方、宿泊・飲食サービスは、コロナ禍後の経済正常化やインバウンド(訪日外国人観光客)消費の増加も織り込まれたと考えられる。

利益面では電気・ガスも

 利益面ではどうか。経常利益の計画の上方修正率が最も大きいのは「電気・ガス」だった。これは、政府の物価高対策延長の効果が含まれることに加え、燃料費調整制度に伴う損益改善や電気料金値上げ、原発再稼働による燃料費削減が背景にあるとみられる。

 それに続く石油・石炭製品は、やはり物価高対策の延長による好影響が出たほか、夏場にかけての原油高による在庫評価益の拡大が押し上げ要因だろう。非鉄金属や鉱・採石・砂利採取は円安と値上げ、自動車は売上高と同様の理由で利益が改善方向にあると推測される。

 このように、次の四半期決算では価格転嫁が進めやすいエネルギーや素材関連加え、半導体不足緩和の恩恵を受ける自動車関連が、経常利益見通しの上方修正が期待される。

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【プロフィル】永濱利廣…第一生命経済研究所・首席エコノミスト/鋭い経済分析を分かりやすく解説することで知られる。主な著書に「経済指標はこう読む」(平凡社新書)、「日本経済の本当の見方・考え方」(PHP研究所)、「中学生でもわかる経済学」(KKベストセラーズ)、「図解90分でわかる!日本で一番やさしい『財政危機』超入門」(東洋経済新報社)など。

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