海外株式見通し=米国、香港

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2024/1/11 10:30

【米国株】「出遅れディフェンシブ銘柄」に魅力

 2023年の米国株相場は代表的株価指数のS&P500指数の年間騰落率がプラス24.2%に達するなど、堅調に推移した。生成AI(人工知能)を中心としたイノベーションに後押しされて「マグニフィセント7」と呼ばれる主要大型ハイテク・半導体銘柄が上昇をけん引。S&P500が22年初来の安値水準にあった22年10月~23年1月の株価底打ち反転から、1年超の上昇基調をたどっている。

 全米アクティブ投資マネージャーズ協会(NAAIM)会員の株式エクスポージャーを示す「NAAIM指数」は、昨年10月25日に昨年来最低水準の24.82に低下。その後、米国債の買い戻しとともに上昇。歩調を合わせて、S&P500の日次終値も10月27日の4117ポイントをボトムに切り返した。

 以降、インフレ率減速に伴う利上げ打ち止め・利下げ観測が台頭し、米株は「サンタクロース・ラリー」で年末高となった。

 10月27日は上昇相場の延長への起点となった日というよりも、相場けん引役が大型ハイテク株から出遅れ銘柄へと交代していく流れのターニングポイントだったとみる余地もあろう。

 例えば、S&P500構成銘柄のうち、22年末から昨年10月27日終値までの騰落率がマイナスで、なおかつ10月27日~12月29日終値までに30%以上上昇した銘柄数は59に上る。

 その中には利下げ観測への感応度が高い不動産関連・資産運用会社も含まれるが、手術ロボット「ダ・ビンチ」で知られるインテュイティブサージカル(ISRG)などの医療機器、その他ヘルスケア関連、ディスカウントストア、情報サービスなど景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄も多い。

 これは、米経済のソフトランディング(軟着陸)シナリオが相場を支える一方で、景気悪化を警戒する向きも少なくないということを示唆している。よって、「出遅れディフェンシブ銘柄」はここからの投資対象として魅力的な面がありそうだ。

【香港株】総統選後の台湾資本企業見通し

 グローバル金融市場で大きな関心を集める台湾総統選(および立法委員選)が13日に迫ってきた。「1つの中国」とうたわれて久しいものの、その意味は必ずしも明確ではない。

 1972年2月の米ニクソン大統領の訪中時に米国と中華人民共和国が発表した外交文書である「上海コミュニケ」は、「台湾海峡の両方の中国人が中国は1つといい、米政府はそれを認め、チャレンジしない」との玉虫色の内容だ。台湾有事のリスクを解決する上で米中の双方が根拠とできるものではないだろう。

 台湾有事に際して無視できないのが、台湾資本の中国企業が中国本土の経済に大きな影響を及ぼしている点だ。それらの企業が引き揚げた場合のデメリットを考慮すると、世の中でけん伝されるほど台湾有事リスクが高いわけではないかもしれない。主要な台湾資本の中国企業として以下の3社が挙げられる。

 世界最大の米菓メーカーで、中華圏最大の食品会社である中国旺旺集団(ワンワン・ホールディングス)は、中国本土と台湾では「旺旺雪餅」「旺旺仙貝(せんべい)」「旺仔ミルク」「旺仔QQ糖(グミ)」「旺仔小饅頭(卵ボーロ)」などで広く知られる。

 台湾の頂新国際集団の傘下にある康師傅控股(ティンイー)の康師傅(カンシーフ)は、即席めんの世界需要の約4割を消費する中国で22年の市場シェアの4割超の首位を占めている。

 台湾の食品関連・流通企業で最大手の統一企業グループの傘下である統一企業中国控股(ユニ・プレジデント・チャイナ)は、本土の果汁飲料、即席めん事業などを展開。中国市場でのシェアは、即席めんでは康師傳に次いで2位、また、飲料市場では首位のコカコーラに次ぐ2位の座を康師傳や中国旺旺集団と争っている。

 これらの企業の株価は、昨年以降軒並み軟調に推移している。台湾総統選後、過度なリスク織り込みからの平均回帰的な反転の可能性も意識される。

※右の画像クリックでグラフ拡大

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

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