<新興国eye>チェコ中銀、賛成多数で0.5ポイント利下げ―1委員は0.75ポイント下げ主張

新興国

2024/2/13 9:07

 チェコ国立銀行(中銀)は前週(8日)の金融政策決定会合で、インフレ低下傾向を受け、政策金利の2週間物レポ金利を6対1の賛成多数で0.50ポイント引き下げ、6.25%とすることを決めた。市場の大方の予想通りだった。ただ、今回の会合で1委員が0.75ポイントの利下げを主張、反対票を投じた。

 中銀はインフレ加速を受け、21年6月から22年6月まで9会合連続で利上げを実施、利上げ幅が計6.75ポイントに達したことから同8月から据え置きに転じた。23年11月まで11会合連続で据え置いたあと、前回12月会合で20年5月以来3年7カ月ぶりに利下げに踏み切り、今回で利下げは2会合連続となる。6.25%の政策金利は依然、1999年6月(6.50%)以来、24年8カ月ぶりの高水準。

 中銀は声明文で、2会合連続で利下げを決めたことについて、「1月のインフレ率が前年比3%上昇と、物価目標の許容範囲(1-3%上昇)の上限までに低下した」とし、インフレ低下を受け、追加利下げを決めたとしている。

 ただ、利下げ幅は前回の0.25ポイントから2倍に拡大した。これは景気見通しの悪化が背景。中銀は景気見通しについて、「23年10-12月期GDPは前期比0.2%増に回復したが、内外需は引き続き低迷、制限的な金融政策や弱い景況感、そして依然、高水準のエネルギー価格により、家計所得の伸びが鈍化、経済成長を鈍らせている」と懸念を示している。中銀の経済予測では24年は0.6%増、25年は2.4%増と予想している。

 中銀は今後の金融政策について、前回会合時と同様、「今後数年間のインフレ見通しには依然、インフレ期待の上昇リスクがある。これらのリスクが顕在化すると、インフレ率は大幅に低下するものの、2%上昇の物価目標の達成は困難になる」とし、その上で、「中銀は金融引き締め政策を継続し、さらなる利下げの可能性に慎重に取り組む必要がある」とした。

 中銀は将来の金利水準ついて、「政策金利は今期(1-3月期)、そして来期(4-6月期)も最新の経済予測の標準シナリオで予測される水準(それぞれ5.5%と4。0%)を上回ることになる」とし、急速な利下げを避けたい考え。

 また、次回3月会合での追加利下げについて、中銀は前回会合時と同様、「さらなる金利引き下げのペースは主にディスインフレのプロセス(インフレの低下基調)の持続性や財政政策の経済への影響、雇用市場と国内外の需要の動向に依存する」とし、当面は段階的な利下げを進める方針。ただ、中銀は、「インフレ率が予測通りに低下しない場合、依然として制限的な水準で、金利引き下げサイクルをいつでも一時停止、または終了する」との文言を残している。

 インフレ率は22年秋のピーク以降、著しく低下、全体指数は22年9月の18.0%上昇から23年12月時点で6.9%上昇に、コア指数も14.7%上昇から3.6%上昇に低下した。だが、中銀は、「インフレとの戦いは終わっていない」とし、その上で、「インフレが2%上昇の物価目標近くで安定するまでインフレとの戦いを続ける決意を確認した」としている。中銀ではインフレ率(全体指数)は24年に2.6%上昇、25年に2.0%上昇と予想。ただ、コア指数は24年に2.9%上昇に加速すると見ている。

 インフレ見通しに対するリスクについて、中銀は、「インフレ期待が抑制されなくなる恐れや、雇用市場のひっ迫による賃金上昇がインフレ上振れリスクとなる」としている。

 こうした中銀の慎重な追加利下げスタンスにもかかわらず、市場は今回の会合で中銀は大胆な利下げに転換しており、政策金利は年末までに3%を下回ると予想している。チェコ経済がEU(欧州連合)の中で唯一、コロナ禍前の生産水準に戻っていないため、今後数カ月のインフレ上振れリスクよりも実体経済をより重視していると見ている。

 次回の会合は3月20日に開かれる予定。

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提供:ウエルスアドバイザー社

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