<新興国eye>カンボジアの電動モビリティ化促進 世界銀行が提言

新興国

2024/4/19 8:45

 3月28日、世界銀行は、「電動モビリティ化に向けた国家ロードマップへの提言」を発表しました。現在策定中の電気自動車(EV)等の電動モビリティーを促進するための国家政策枠組みに提言しています。具体的には、中古が大半を占めるガソリン車とディーゼル車が主流の現状からの移行の方向性を示したいとしています。電気自動車の需要と供給の両方を増やす方法と、電気自動車充電に必要な電力の需要増加にどのように備えるかについて提言しています。

 2021年12月、カンボジアは、2050年までにカーボンニュートラルな経済を実現するという目標を掲げました。運輸部門の脱炭素化に向けた政府の戦略には、2050年までに二輪車の70%、乗用車と都市バスの40%を電動化する目標が含まれています。また、2050年までに都市の旅客輸送需要の30%を公共交通機関で賄うことも目標としています。カンボジアの経済成長に伴い、自動車の総流通台数は現在の600万台から2030年には800万台、2050年には1400万台を超えると予測されています。他方、現在、カンボジアで走行している電気自動車は1000台未満です。

 カンボジアで新たに流通する自動車を、ガソリン車やディーゼル車ではなく電気自動車にするためには、自動車の輸入・使用規制を漸進的なアプローチで改革する必要があるとしています。また、ガソリン車やディーゼル車が一定の年数を経過した場合に強制的に廃車処分とすることも、新車の需要を高め、電気自動車の市場参入を前倒しする効果が期待されるとしています。短期的には、カンボジアの電動モビリティへ化は、二輪車やトゥクトゥクが先行すると予想しています。

 電気自動車への移行は、これまで声高に言われてきましたが、電池の問題や電力供給の問題等もあって、ハイブリッド車等を活用しつつ、漸進的に進めていくことが必要というのが現在の多数意見となっているものと見られます。電力需要が急速に伸び、電気料金も簡単には下がらない状況にあるカンボジアにおいて、電動モビリティ化を急激に進めることは様々な困難を伴うものと見られます。当面は、エネルギー効率も高いハイブリッド車等を活用しつつバランスの取れた漸進的なアプローチが期待されます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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