海外株式見通し=米国、香港

【米国株】巨大ITの決算反応と今後の展開を注視

 米主要企業の決算発表がヤマ場を迎えている。EV(電気自動車)のテスラ(TSLA)の1~3月は株価大幅下落を招いてもおかしくない内容だったが、「陰極まれば陽に転ず」の格言に沿って好反応を示した。相場の強弱・過熱感を示す「RSI(相対力指数)」(14日)は、直近で20台前半の売られ過ぎ水準まで切り下げていた。

 一方、業績の良かった動画配信のネットフリックス(NFLX)は来年から四半期ごとの会員数の開示を取りやめると表明したことが嫌気され、決算発表後に株価が下落した。昨年10月以降の上昇トレンドがこれにより一服し、マドをあけて上昇する直前の2月高値の500ドル近辺が押し目のメドになるのかが注目される。

 4四半期連続の増収増益決算を発表したSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)大手のメタ・プラットフォームズ(META)も、設備投資が膨らむことが懸念され、株価が急落した。同社は生成AI(人工知能)分野へ注力するため、エヌビディア製GPU(画像処理半導体)を大量に購入しているとされる。NFLXとの違いは、METAの株価はそれまでの上昇基調がより長かった点である。それだけに、売り圧力もたまりやすい面がある。

 アルファベット(GOOGL)とマイクロソフト(MSFT)は好決算に対して株価が素直に上昇している。アルファベットは初の配当実施と700億ドルの巨額自社株買いも好感された。株価が150ドルを大きく超えてきたことは、2021年11月~22年2月にかけて形成した高値との「二番天井」懸念を払しょくした点で意義がある。

 今後の大型ハイテク株の決算発表では、巨額自社株買い発表の可能性を考慮すべきだろう。特にアップル(AAPL)は昨年5月に900億ドルの自社株買いを発表しており、今回の決算発表でも還元策が注目される。

【香港株】生産増が経済下支え、BYD輸出影響も

 中国共産党は4月30日に中央政治局会議を開き、もともとは昨秋に開催するはずだった「3中全会」を7月に改めて開催することを決めた。3中全会は党大会の翌年に開き、中・長期の主要な経済政策方針を決定することが多かった。不動産不況への対応が定まっていないことも開催が遅れた理由の1つとみられていた中で、党指導部が不動産不況への対処方針を含む経済運営に対して自信を深めてきた表れとも考えられる。

 中国国家統計局が4月30日に発表した4月の製造業および非製造業のPMI(購買担当者指数)は、製造業が50.4と前月比0.4ポイント低下も2カ月連続で景況判断の50を上回った。生産が52.9(同0.7ポイント上昇)に対し、新規受注が同1.9ポイント低下、海外需要の新規輸出受注が同0.7ポイントポ低下と、需要が不充分な中で生産が主導・先行して景気を下支えしている面もうかがわれ、近い将来に生産過多・供給過剰となる懸念は残る。他方、非製造業のうち建設業が同0.1ポイント上昇と勢いを保っている点は、好材料と言えそうだ。

 既に供給過剰分が海外輸出に向かう動きは広がり、中国政府から補助金を受けた中国製EVが競争を阻害していないかをEU(欧州連合)が調査するなど、貿易摩擦の動きもみられる。これに対し中国政府もEVなど新エネルギー車に買い替えた場合に1万元の補助金支給を開始するなど、内需喚起に注力している。

 中国自動車大手BYD(比亜迪、1211香港)が4月29日に発表した1~3月決算は、売上高が前年同期比4%増の1249億元、純利益が同11%増の45億元と堅調だった。値下げとともに海外販売台数が同2.5倍の約9万8000台に急拡大し、業績の伸びをけん引した。米テスラとの比較では、23年7~9月に同水準だったEV販売台数はテスラが24年1~3月に前四半期比で大きく減少に対したのとは対照的に、BYDは順調に拡大している。それでも株価の上値が重いのは、貿易摩擦など海外販売への影響が懸念されているためだろう。

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(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

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