<新興国eye>カンボジア経済の回復続く―アジア開発銀行予測

新興国

2024/5/2 8:45

 アジア開発銀行(ADB)は、4月11日に「アジア経済見通し2024年4月版(Asian Development Outlook April 2024)」を発表しました。ADBでは、アジア・太平洋地域の開発途上国経済は、堅調な内需、半導体輸出の改善、観光業の回復を背景に底堅い成長を続けているとしています。しかし、サプライチェーンの混乱、米国の金融政策の不確実性、異常気象の影響、中国の不動産市場のさらなる低迷といった多くのリスクに引き続き警戒する必要があると指摘しました。

 アジア開発途上国の経済成長見通しを2024年4.9%(前回2024年9月予測4.8%)、2025年4.8%と予測しています。アジア・太平洋地域のインフレ率は、国・地域によってかなりばらつきがあるものの、2022年の4.4%から、2023年3.3%、2024年3.2%、2025年3.0%と落ち着いてくると予測しています。

 カンボジアについては、2024年のGDP成長率を5.8%(前回6.0%)、2025年6.0%と予測しています。縫製品の輸出の回復、堅調な輸出が続く縫製以外の製造業等に支えられて、第二次産業の成長率は2024年8.0%、2025年8.4%に達すると予測しています。第3次産業については、観光の回復が続き、2024年5.4%、2025年5.2%の成長となると見ています。第一次産業は、農産品の輸出の伸びに支えられて、2024年1.3%、2025年1.4%成長すると予測しました。他方、建設業、不動産業については、中国の不動産不況、中国からの投資減退の影響を受けて、引き続き伸び悩むと指摘しています。

 物価上昇率予測については、ロシアのウクライナ侵攻等の影響もあり、2022年は5.3%まで高まりましたが、2023年は2.1%(前回3.0%)、2024年は2.0%(前回4.0%)、2025年2.0%に落ち着くとしています。

 国際収支については、輸出の好調にも支えられて、経常収支の赤字は、2024年8.6%、2025年7.6%と縮小傾向にあると見ています。また、外貨準備は2025年末には250億ドル(輸入の7.6か月分)に増加すると予測しました。

 リスクとしては、2029年に予定されるカンボジアの後発開発途上国(LDC)からの卒業に伴う特恵関税資格の喪失を特記しています。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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