英国、統一地方選挙での与党・保守党大敗響き、メイ首相辞任へ

経済

2019/5/28 11:24

 メイ英首相は5月24日、首相の出処進退を決める与党・保守党の幹部との会談後、首相官邸前で行われたテレビ演説で、6月7日に保守党の党首を辞任することを正式に発表した。次期党首(事実上の次期首相)を決める選挙は6月10日から始まり、7月末までに新党首が誕生する見通し。

 メイ首相が失脚するきっかけとなったのは、英国のEU(欧州連合)離脱日が当初の3月29日から4月12日に延長されたあと、さらに10月末まで再延長されたことに起因する。そもそも離脱日が2度も延長されたのは、これまで下院議会で3度も「意味ある投票」(政府合意案に対する議会の最終承認の投票)で首相のEU離脱協定案が否決されたからだ。メイ首相は4回目の議会承認を目指し、5月21日に新離脱協定案の骨子を発表したが、これが命取りとなった。

 新案の策定をめぐり、メイ首相は4月2日のテレビ演説で、議会通過には野党協力が不可欠と判断し、EU離脱には消極的な最大野党の労働党と妥協案(新案)作りの協議に入ると発表した。しかし、その後2カ月近く経っても労働党との話し合いは平行線をたどった。

 こうしたこう着状態を打破するため、メイ首相は奇策に打って出た。議会が離脱協定案を承認することを条件に、(1)英国全体が一時的に関税同盟に残る(2)議会承認前にEU離脱の是非を問う2回目の国民投票を実施し、その結果に対し法的拘束力を認める――の2点について議会の投票を認めるという新案を議会に提示した。これは議会、特に労働党にすり寄った内容となった。また、骨子では北アイルランド国境の厳格な管理を回避するための、いわゆるバックストップ条項(安全策)は離脱協定から削除しないが、同条項が適用された場合、英国は北アイルランドとの間に国境を作らないようEUの関税同盟と統一市場のルールに合致させる、と提案した。

 しかし、この新案の骨子に対し、与党・保守党はもとより野党からも批判が続出。イアン・ダンカン・スミス元保守党党首ほか、閣内でも批判が相次いだ。残留支持派のジェレミー・ハント外相と離脱急進派のマイケル・ゴーブ環境相がこれまでの合意とは違うと反発。もう一人の強力な離脱推進派のアンドレア・レッドソム院内総務は首相退陣を求めて辞任した。

 もう一つの首相失脚のきっかけとなったのは、5月2日に投票が行われたイングランドの統一地方選挙だ。メイ首相が率いる保守党は4年前の選挙時の4894議席から3564議席と、一気に1330議席も減らし、750年もの長い英国議会の歴史の中で最大の選挙敗北を喫した。

 また、メイ首相が自身のEU離脱協定案の議会通過を目指し、「首相案+EU関税同盟」の妥協案の策定を目指して手を組んだ労働党も84議席を失ったことで英国のEU離脱の先行きは一段と不透明になった。そればかりか、メイ首相の早期退陣待望論が政界や英国メディアで急速に高まる結果となった。

 テレグラフ紙は5月5日付の社説で、「統一地方選挙で敗北した労働党はメイ首相の連立相手として正当性がないことを示した」と総括。「メイ首相の労働党との共同戦線による議会強行突破戦略では国民の信頼を勝ち取れない」と批判した。その根拠について、「マルクス主義(労働党)との連立は保守党が国民の声を聞かず英国を危険に晒す。労働党との合意により英国がEUの関税同盟に残ることは真のブレグジット(英EU離脱)を破壊し、経済の発展を妨げる。有権者はこれを裏切りと見抜き、保守党は(次の選挙で)大敗し労働党政権の樹立へと導く。これはわれわれの社会にとって大きな危機だ」と指摘した。

 その上で、同紙は社説で、「保守党の危機を救う唯一の方法は党首交代だ」と断言。メイ首相の早期退陣を促した。さらに、「保守党は新党首の下で、EU離脱の完遂と個人所得税の大幅減税、横行する暴力犯罪から国民を守ることの3原則を約束すべきだ。保守党は欧州懐疑主義を提唱すべき。EUからの国家主権の奪回を求める数百万人もの有権者を満足させることができなければ、保守党は次の選挙(22年)に勝利することはできない」と述べている。

提供:モーニングスター社

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