FOMC、政策金利0.25ポイント引き下げを決定―10年半ぶりの利下げ

経済

FOMC

2019/8/1 9:55

<チェックポイント>

●長期の利下げサイクルの始まりではない―パウエルFRB議長

●2人の政策委員が現状維持を支持―8人が利下げ支持

●バランスシート縮小を前倒し終了へ

 FRB(米連邦準備制度理事会)は7月31日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、市場の予想通り、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を0.25ポイント引き下げ、2.00%-2.25%とすることを決めた。利下げは08年の世界的な金融危機以来、約10年半ぶり。

 FRBは金融機に直面した07年9月18日から08年12月16日まで通算10回の利下げを実施し、事実上のゼロ金利とした。その後、金融政策の正常化を目指し、15年12月から利上げサイクルに入った。16年に1回、17年に計3回、18年に計4回の利上げを実施、政策金利は2.25-2.50%となったあとは、19年1月FOMCから前回6月FOMCまで4会合連続で据え置いていた。

 今回のFOMCでは、10人の政策委員のうち、8人が利下げを支持したが、カンザスシティー連銀のジョージ総裁とボストン連銀のローゼングレン総裁の2委員は現状維持を主張し、利下げに反対した。政策決定が全員一致でなかったのは18年2月のパウエル議長就任以降では前回6月FOMCに続いて2回目となる。

 FRBはFOMC後の声明文で、利下げ決定について、「世界経済の(減速)見通しとインフレ圧力の鎮静化に鑑み0.25ポイント利下げを決めた」とした。

 景気の現状認識については、「経済活動は緩やかな伸び(鈍化)になっている」とし、前回FOMC時の文言を据え置いた。その一方で、前回FOMC時と同様、「経済活動は成長を持続し、力強い雇用市場が続いている」としたが、世界景気の減速や米中貿易戦争が激化し、長期化しているため、「利下げは経済活動が持続的に拡大し、タイトな雇用状況を保ち、インフレ率とインフレ期待がシメントリック(上下が対称)な物価目標2%上昇に収束するというわれわれの見通しに寄与するものの、こうした見通しの先行きは依然不透明だ」とし、今回の利下げが“予防的な”措置であることを強調した。

 今後の金融政策については、「米国の経済見通しに与える影響を注視し、経済成長を持続させるため、力強い雇用市場とシメントリック(上下が対称)な2%上昇の物価目標の達成に向け適切な行動を取る」とハト派的な文言を残している。

 市場では今回の利下げが1回限りの予防的なものなのか、または利下げサイクルの開始を意味するかに焦点を移していたが、パウエル議長は、「今回は調整であり、長期の利下げサイクルの始まりではない」とした。この発言を受け、FRBの金融緩和スタンスは市場の想定よりタカ派的との見方が強まり、主要株価指数のダウ工業株30種平均やS&P500指数は直後に1%超急落し、米10年債利回りは一時乱高下した。

 また、バランスシート縮小(国債・MBS買い取り減額)計画を9月末から8月1日に2カ月前倒しで終了させることも発表した。FRBは17年6月から量的金融緩和(QE)からの出口戦略として月500億ドルの国債・MBS(不動産担保証券)買い取りを減額(国債は月300億ドル、MBSは同200億ドルの減額)していた。

 インフレの先行き見通しについては、前回FOMC時と同様、「インフレ率がシメントリック(上下が対称)な物価目標の2%上昇近辺に達する可能性が最も高いとみている」とした。しかし、現状認識については前回FOMC時と同様、「インフレ率は全体指数とコア指数がいずれも減速し、物価目標の2%上昇を下回っている」とし、その上で、「市場のインフレーション・コンペンセーション(期待インフレ率)は低下している」との文言を残し、インフレ率が物価目標を下回り続けていることに懸念を示した。

 次回FOMCは9月17-18日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 NASD投信<1545>、NYダウ投信<1546>、上場米国<1547>、

 SPD500<1557>、NYダウ<1679>、NYダウブル<2040>、

 NYダウベア<2041>

提供:モーニングスター社

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