英中銀、政策金利と量的金融緩和策を据え置き―全員一致で
2019/9/20 10:24
<チェックポイント>
●7-9月期GDP見通しを前期比0.3%増から同0.2%増に下方修正
●合意なきEU離脱で「ポンド下落、インフレ上昇、経済鈍化」懸念強まる
●「インフレ率は年末まで2%上昇の物価目標をやや下回る」と予想
イングランド銀行(BOE、英中銀)は19日、金融政策委員会(MPC)の結果を発表し、政策金利を全員一致で現状の0.75%に据え置くことを決めた。市場の大方の予想通りだった。「ブレグジット(英国によるEUからの離脱)の先行きが不透明のため、企業の設備投資が抑制されている。また、世界経済の減速で英国の輸出が抑制されている」とし、景気を下支えするための決定だという。
資産買い取りスキームを通じた量的金融緩和策(QE)についても全員一致で、国債の買い取り枠を4350億ポンド(約58.8兆円)、投資適格級の社債買い取り枠を100億ポンドと、いずれも現状通りとした。
BOEは声明文で、景気の現状認識について、「前回の会合以降、米中貿易戦争が激化し、世界経済の減速感が高まっている。ブレグジットの期日や今後の方向性にも変化が起きており、英国の資産市場の相場変動が強まっている」としている。
その上で、7-9月期GDP(国内総生産)伸び率の見通しを下方修正した。4-6月期は前期比0.2%減(1-3月期は同0.5%増)だったが、7-9月期は同0.2%増となる見通しとした。
7-9月期のGDP伸び率が下方修正されたものの、市場ではBOEがECB(欧州中央銀行)やFRB(米連邦準備制度理事会)のように利下げに踏み切るのは難しいと見ている。むしろ、ブレグジット情勢が変化し、「合意なき離脱」になった場合に備えて、金融政策を維持し力を温存した方が得策とみている。
また、EU離脱日(10月31日)前の10月17-18日に開かれるEUサミットでジョンソン英首相がEUと合意できるか否か不透明な状況が続いているため、景気見通しについてBOEは声明文で、「英国とEU(欧州連合)の協議結果によって景気の見方が分かれる。その結果によって適切な金融政策も変わる」とし、現時点ではインフレが加速しない限り、現状維持が適切とした。
今後の景気の見方については、前回会合時と同様、「合意できなかった場合、ポンド相場が急落し、インフレは加速、GDP伸び率は鈍化する」とし、その場合、「われわれはポンド安による輸入物価の上昇や経済の供給力低下(需要超過)によるインフレ上昇圧力と需要後退(供給超過)によるデフレ圧力のバランスを維持する金融政策が必要になる」とした。
インフレ見通しについては、「8月のCPI(消費者物価指数)は前年比1.7%上昇と、7月の2.1%上昇から減速した。コアインフレ率も1.5%上昇に鈍化した」と現状認識を示した上で、「CPIで見たインフレ率は短期的には年末まで2%上昇の物価目標をやや下回る水準が続く」と予想している。
しかし、今後のブレグジット情勢の変化により、BOEはインフレ見通しの修正を余儀なくされるとみている。英議会は今月6日、EU残留支持派が超党派で提出したEU離脱法案(ノーディール阻止法案)を可決したため、10月19日までにEUと合意できなかった場合、もしくは合意できたとしても議会がそれを拒否した場合、ジョンソン首相はEU離脱日を20年1月31日まで延長するようEUに要請しなければならなくなった。とはいえ、EUが離脱日の延期要請を拒否する可能性や延期されてもその後のEUとの離脱協議が難航する可能性もある。
BOEも声明文で、「(離脱日が延期されて)英国とEUの将来の貿易関係の在り方を巡る協議に移行した場合、協議内容を巡ってブレグジットの先行きが不透明となる期間がさらに伸びる可能性がある」と懸念を示している。
市場ではEU離脱が円滑に進めば、BOEは20年下期(7-12月)まで現状維持を続けるが、10月末に合意なき離脱となれば景気支援のためBOEは緊急利下げを行うとみている。また、EUと自由貿易協定を締結し、離脱が円滑に進み英国経済が上向けば、BOEは21年末までに3回の利上げを実施し、政策金利を1.5%にまで引き上げるとの見方もある。
BOEの次回会合は11月7日に開かれる予定。
提供:モーニングスター社
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