<新興国eye>IMF、カンボジアの包括的成長に関する報告書で固定資産税の増税を提言
2019/9/27 10:30
9月6日、IMF(国際通貨基金)は、「カンボジアの包括的成長の前進に向けて」と題するレポートを発表しました。レポートでは、カンボジアがこれまで貧困率を削減し、消費の不平等も減少させてきたことを評価しています。しかし、引き続き所得格差が大きいこと、特に都市部と地方部での格差の拡大が課題であるとして指摘しています。この格差解消のためには、地方部が資するインフラの拡充と、累進性の高い税制による所得再配分が必要と指摘しています。
さらに、インフラ拡充に必要な財源を確保するのに、3種類の税(付加価値税、固定資産税、個人所得税)のうちどれを増税することが最も効果的なのか、一般均衡モデルを使ってGDP(国内総生産)成長率とジニ係数(所得や資産の格差を示す指標)への影響をシミュレーションしています。結論としては、固定資産税を増税することが、GDP成長率も維持しつつジニ係数も改善する効果が最も高いとしています。
カンボジアの固定資産税(不動産税)率は、現在のところ評価額の0.1%と非常に限定的です。この税率を上げることにより、不動産投資から多大な所得を得ている富裕層や海外投資家への課税を拡充し、これを財源として地方インフラの拡充につなげるというIMFの提言は、各方面を納得させやすいものと見られます。個人所得税や法人所得税の捕捉率が必ずしも高くないカンボジアでは、固定資産税による財源確保は重要な手法の一つと見られ、政府の前向きの検討が期待されます。
【筆者:鈴木博】
1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。1982年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。07年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。
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提供:モーニングスター社
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