9月FOMC議事録、複数の委員が米経済のリセッションに言及

経済

2019/10/10 11:42

<チェックポイント>

●0.50ポイント利下げ支持のブラード氏以外にも、2人が大幅利下げに傾斜か

●現状維持支持の1委員は景気次第で追加利下げ否定せず

●全体的に7月FOMC以降やや景気下ブレリスク高まったと判断

 FRB(米連邦準備制度理事会)は9日、9月17-18日開催分FOMC(米連邦公開市場委員会)議事録を公開した。同会合では、賛成多数で政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を0.25ポイント引き下げ、2.00-2.25%とすることを決めた。10人の委員のうち7人が0.25ポイントの利下げを支持、反対した委員のうち2人は現状維持を主張したが、1人は0.50ポイントの大幅利下げを主張した。

 具体的には、ブラード・セントルイス連銀総裁が0.50ポイントの大幅利下げを主張。ジョージ・カンザスシティ連銀総裁とローゼングレン・ボストン連銀総裁の2委員が前回7月会合時と同様に現状維持を主張し、利下げに反対した。政策決定が全員一致でなかったのは18年2月のパウエル議長就任以降では6月と7月に続いて3回目となる。反対が前回会合時よりも1委員増えており、今後、これまで通り円滑に利下げが決まるかは不透明になった。

 この点について、議事録では、「ブラード総裁は0.50ポイントの利下げが期待インフレ率の一段の低下、また、下ブレリスクに直面している景気の一段の減速を防ぐ上で“保険”となる。また、(低水準にある)インフレ率と期待インフレ率を急速に持ち直させる効果があると主張し、(0.25ポイント利下げに)反対した」としている。

 しかし、「(0.25ポイント利下げを支持した7委員のうち)2委員は金融政策の影響が総需要に及ぶまでには時間差があることから、今回の会合で決めた金融緩和(利下げ)の影響が将来の経済活動を下支えることになる。(その意味で)適切なタイミングだったと指摘した」としており、ブラード総裁のほかに2人、将来、米経済のリセッション(景気後退)となるリスクを低下させるため、0.50ポイントの大幅な調整利下げが好ましいと見ていた可能性がある。

 また、今回の議事録では、前回7月末FOMC時点に比べ、景気見通しが悪化したとの判断に変わったことが分かった。議事録では、「FOMC委員は全体として、7月会合以降やや景気下ブレリスクが高まったと判断した。これは米中貿易摩擦の先行き不透明など海外の社会情勢(英国の合意なしのEU離脱や香港デモ、中東情勢など)に起因している」と指摘している。その上で、「複数の委員は国債のイールドカーブなどにより米経済のリセッションの可能性がここ数カ月で高まったことが示された」と逆イールド(長短金利の逆転現象)を引用してリセッションの可能性に言及していたことも分かった。

 一方、金融市場の流動性不足に対応するため、9月19日からニューヨーク連銀がオペのために管理する口座「システム・オープン・マーケット・アカウント(SOMA)」を通じて、FF金利を目標レンジ(1.75-2.00%)に維持するため、必要に応じ、貸借期間がオーバーナイト(翌日物)または、1日以上の現先オペを実施することを決めた。

 また、19日からIOER(超過準備預金金利)を従来の2.10%から1.80%に0.30ポイント引き下げることも決まった。これも流動性対策だ。IOERとは、市中銀行がFRBに預け入れることが義務付けられている準備預金の所要準備を上回る準備預金の預入額(超過準備預金)に付与される金利。平常時にはIOERがFRBのFFU金利誘導目標のレンジの下限となるが、超金融緩和時にはFF金利の上限となっている。IOERが引き下げられれば、市中銀行がFRBの当座預金口座に預ける準備預金を保持するメリットが低下し準備預金が減少する。その分、市場に流動性が増加し短期金利を引き下げる効果が期待される。

 この点について、議事録では、「複数の委員が(短期金利に上昇圧力がかかっている場合、いつでもレポ取引により短期資金を調達できる)スタンディング・レポ・ファシリティ(SRF)を導入するメリットについて、金融政策の一環として検討することは有益だと指摘した」としている。市場では20年初めまでにSRFが導入されると予想している。

<関連銘柄>

 NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、

 SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、

 NYダウベア<2041.T>

提供:モーニングスター社

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