【株式新聞・総力配信】順風満帆の「検体検査」(2)―浮上する有力銘柄

株式

2019/10/15 14:01

 世界的に拡大を続ける検体検査の市場。がんや生活習慣病の兆候を見極め、健康寿命を伸ばすためにもそのニーズは強い。ここからは、銘柄特性も踏まえて有力株を探っていきたい。

<ファルコHD「コンパニオン診断薬」>

 臨床検査センターのファルコホールディングス<4671.T>は、患者への投薬の有効性をあらかじめ確かめる「コンパニオン診断薬」で、世界で初めてさまざまながん種に横断的に適用される「MSI検査キット(FALCO)」が昨年12月に保険適用となった。引き合いは強いもようで、来3月期の業績V字回復を後押ししそうだ。

 コンパニオン診断薬は、医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するための臨床試験に用いる。特定の薬剤が効く患者を選別することで、がんなどの治療を効率的に進めることに役立つ。FALCOはがんの種類を問わず、腫瘍(しゅよう)組織からの判定を可能にする。米メルクのがん免疫薬「キイトルーダ」の適用判定にも拡大しつつあるようだ。

 ファルコHDは今3月期、連結営業利益が前期比44.0%減の7.5億円に落ち込む見通しを示している。これは、今年2月に発生した研究所の火災事故が影響するためだ。今後は自動化設備の導入などによる収益体質の改善も見込まれ、体制が正常化する来期の業績は急回復する公算が大きい。株価は春ごろに底値圏から急ピッチで反発したが、夏場は一服して三角もちあいを形成している。上昇中の26週移動平均線が下値を支える。

<クラゲの発光でがん診断、オンコリスB>

クラゲの持つ発光性のたんぱく質を用いたがん診断の実用化を目指すのが、ウイルスでがんを治療する「腫瘍溶解性ウイルス」で知られるオンコリスバイオファーマ(=オンコリスB)<4588.T>だ。順天堂大学と研究開発に取り組んでいる。

 腫瘍溶解性ウイルスはがん細胞に感染して死滅させるはたらきをし、遺伝子改変により、がん細胞の中だけで増殖する設計。製薬各社の新薬が今年から来年にかけ承認される見通しで、業界の注目度が高い。オンコリスBも国内で食道がんを対象とする治療法の臨床試験が進行中だ。

 一方、こうしたウイルスの遺伝子にクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)を組み込むことで、がん細胞を検出する体外診断薬「テロメスキャン」の開発も進む。GFPが発光することで、従来の技術では難しかった血液中に循環するがん細胞の検出を可能にする。

 血液検査で容易にがんを診断できるテロメスキャンには、早期発見や再発の診断において大きな貢献余地がある。子宮頸(けい)がんなど3領域で販売承認の取得を目指し、米国でも臨床試験を開始する方向だ。

<好業績の医学生物、がんゲノム医療に商機>

 医学生物学研究所<4557.T>は臨床検査薬や研究用試薬のメーカー。中期的には「がんゲノム医療」の分野で商機が拡大しそうだ。

 同社は体外診断用医薬品の新規保険収載品数で国内トップを誇る。自己免疫疾患検査試薬やがん関連検査試薬をけん引役に、足元の業績は好調に推移。今3月期の連結営業利益は前期比2倍の10億円を計画する。

 一方、事業化の準備を進めているのが遺伝子パネル検査の解析受託だ。遺伝子パネル検査は、がんなどの組織を用い、多数の遺伝子の変異を同時に調べるシステム。DNAの物質的な配列を読み取る「次世代シーケンサー(塩基配列解析装置)」とともに、一人一人の体質や病状に合わせた最適な治療を探るゲノム医療のカギを握る。

 このほか、コンパニオン診断薬の受託開発サービス、免疫システムを利用した検査事業といった新規事業も控える同社。株価は年前半の急騰後の押し目買い妙味が膨らんでいる。

<A&T、日本電子との提携強み>

 株価を順調に伸ばすエイアンドティー(=A&T)<6722.T>は、なおも割安感が残る検体検査の関連銘柄だ。病院向けに試薬や装置を供給し、臨床検査室全体をカバーする同社は、「微量分析」の領域を切り拓いた日本電子<6951.T>と提携している点も大きな強みだ。

 日電子は電子顕微鏡をはじめとする理化学機器の世界トップクラスのメーカーだが、検体検査の世界では、ごく微量の試薬と検体で高精度の測定を可能にする画期的技術の確立により、分析装置の進化に大いに貢献したことでも有名。A&Tは日本電子と、2008年に資本・業務提携をした。血液の自動分析装置などに強い日本電子と、相互補完の関係で市場深耕を図っている。

 A&Tは今12月期(単体)に、営業利益10.1億円(前期比30.4%増)を計画。臨床検査情報システムが好調だ。中・長期的には自社製品の販売比率拡大や、中国事業の強化による一段の業績成長を志向する。PER10倍、PBR(株価純資産倍率)1倍の投資尺度は、今後の市場拡大の見通しを踏まえると評価余地がまだ大きい。

提供:モーニングスター社

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