<新興国eye>ムーディーズ、カンボジア格付け「B2」を維持
2019/10/18 12:04
10月4日、国際的格付機関のムーディーズは、カンボジアのソブリン発行者格付けを今回も「B2」で変わらずと発表しました。また、今後の見通しも「安定的」としています。好調なGDP(国内総生産)成長見通し、適切で返済可能な政府債務の状況等を評価しています。輸出の伸び、好調な観光、雇用や建設を支える好調な外国直接投資等に支えられて、19年のGDP成長率は7.0%となると予測しています。ただ、20年は、EU(欧州連合)による特恵関税制度EBAの資格停止や中国経済のスローダウンなどにより、GDP成長率は5.5%に低下するとしています。
リスクとしては、第1に、EUによる特恵関税制度EBAの見直しをあげています。特恵関税の資格停止は、輸出およびGDP成長に大きな影響を与えかねないと見ています。
第2に、カンボジア経済と深く関係している中国経済の動向もリスクであり、特に直接投資が伸び悩んだ場合、建設・不動産セクターに与える影響が懸念されるとしています。
第3に、GDP成長率の約2倍の速さで急速に伸びている銀行貸付も経済的・金融的安定性に対するリスクであり続けているとしています。ただ、不動産事業向けの主な資金は、海外からの投融資であるため、不動産価格の暴落があっても国内金融機関への影響は限定的であると予測しています。
なお、ムーディーズの格付けでは、AaaからBaaまでの10段階は「投資適格」、Ba以下は「投機的」と分類されています。カンボジアの「B2」は、「投機的とみなされ、信用リスクが高いと判断される債務に対する格付け」と定義される「B」のうち中位にあることを示しています。
【筆者:鈴木博】
1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。1982年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。07年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。
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提供:モーニングスター社
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