(再送)【株式新聞・総力配信】中国市場を斬る(2)―キーワードは「高付加価値」、TDKやワコム躍進

株式

2019/11/5 14:02

 中国市場の低迷が日本企業に強い逆風となっている。ただ、個別に精査してみると、厳しい環境下でも収益の底堅さを示すプレーヤーもあり、足元の決算一巡後の投資戦略を考える上でのヒントが見えてくる。

<上期中国売上は前年比9%減>

 10月末までに20年3月期上期業績を発表した企業の中で、中国や、中国を含むアジアセグメントの業況を開示している時価総額上位30社の決算をまとめた。各社の中国事業の売上高は合計で5兆6403億円となり、前年同期比で約9%減少した。

 全体の売上高も前年同期比3.4%減の計30兆2691億円となったが、落ち込みは中国事業よりも少ない。建機メーカーのコマツ<6301.T>は全体で7.9%の減収だが、うち中国向けは2割強減った。日立建機<6305.T>も全体は2%減と小幅なマイナスにとどまる中で、中国の減収率は24.3%と大きい。

 外資の同業も状況は同じで、世界最大手の米キャタピラーもアジア市場中心に7-9月の収益が低調だった。同社のジム・アンプレビーCEO(最高経営責任者)は、10-12月の需要は横ばいで推移すると見通している。

 しかし、業績の悪化は一様ではない。各社の中国売上高(四半期開示のある27社で集計)の合計は第1四半期(4-6月)の2兆6272億円に対し、第2四半期(7-9月)は2兆7880億円に拡大し、前年同期比の減収率も10.5%から7.6%に緩和している。

<「昔のヒット曲ではだめ」、新製品に存在感>

 下支え役は高付加価値製品だ。中国市場について「大底打ったが、全体的に需要が増えていく兆しはない」と話す日本電産<6594.T>の永守重信会長の言葉を借りれば、苦戦しているのは「昔のヒット曲ばかりの演歌歌手」「新曲を出さないと」。陳腐化する既存製品の回復を待つのではなく、マーケットのニーズに即した新製品を積極的に打ち出すことが勝ち残る条件というわけだ。

 同社はEV(電気自動車)の動力源のトラクションモーターや、5G(次世代高速通信システム)機器向けの冷却ソリューションといった新製品で攻勢を掛ける。中国売上高の前年同期比マイナス幅は、第1四半期、第2四半期とも3%程度と健闘している。

 電子部品メーカーでは、TDK<6762.T>も上期のアジア向け売上が前年同期比で1.3%伸びた。高周波部品や2次電池といった戦略製品が逆境をカバーし、連結営業利益が半期ベースで過去最高の688億円(同10.7%増)に拡大した。

 こうした点を踏まえると、日電産、TDKとも上値余地はまだ大きそうだ。

 信越化学工業<4063.T>も上期の中国売上高の減少幅が前年同期比3%にとどまる。「高機能材料など代替の利かない製品の需要が根強い」(信越化のIR担当者)。このほか、ソニー<6758.T>は中国売上高が上期に同17.5%増、7-9月では同25.1%増という異色の強さを見せている。

 中型株ではワコム<6727.T>に注目したい。同社の中国売上高は、上期が現地通貨ベースで前年同期比6%拡大。ゲームやアニメーションの製作が盛んになりつつある同国では、同社の主力のペンタブレットの需要が増えている。「海外では欧米よりも伸び代が大きい」(ワコムのIR担当者)という中国で、厳しい経済環境の中でも収益を積み上げる。生産面では米国の制裁関税の影響を受ける中国から、周辺国への移管を進めてダメージ軽減を図っている。株価は上値のフシの52週移動平均線の突破を試す局面だ。

提供:モーニングスター社

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