英保守党が総選挙で圧勝、EU離脱大きく前進へ(中)

経済

2019/12/27 11:42

 ジョンソン英首相が10月29日に提出した早期総選挙法案が大差で可決され、英国は一気に総選挙モードに入った。ジョンソン首相はこの総選挙で与党・保守党による単独過半数政権を復活させることに全力を挙げた。これまでの絶対多数の政党不在というハングパーラメント(宙ぶらりん議会)から抜け出し、EU(欧州連合)離脱を成就させる最後の手段だった。

 ジョンソン首相が総選挙を選択したのは、メイ前首相のEU離脱協定(旧協定)に代わる新離脱協定の議会通過が困難となったためだった。最大野党の労働党や自民党、SNP(スコットランド国民党)などEU残留を支持する野党に加え、ジョン・バーコウ下院議長(元保守党議員)までもが合意なきEU離脱の阻止を狙った巧みな離脱延期戦術を繰り広げた。

 選挙前、多くの調査機関の関心はジョンソン首相が圧倒的大勝利となるのか、または僅差で勝利するのかに移っていた。11月28日時点のユーガブの世論調査によると、保守党は野党に対し68議席の差をつけて単独過半数政権を樹立すると予想したが、前日(12月11日)時点では労働党が猛追し、保守党の支持率は41%、労働党は36%(7日時点より3%ポイント上昇)で、リードはわずか5ポイントに縮まっていた。これは保守党が単独過半数を取っても、野党との議席差はわずか6議席になることを意味した。

 保守党は前回17年の総選挙で政策について多くを語らなかったため支持を得られなかったとして、今回の選挙ではメイ政権当時の緊縮財政を放棄し、15年ぶりの大幅な財政支出を行うことを鮮明に打ち出した。21年までに全省庁の歳出規模を138億ポンド拡大するほか、低所得者支援策として、110億ポンドの個人向け減税を行う。個人向け減税は国民健康保険の課税最低限を引き上げることにより、3100万人の国民に対し、健康保険料負担を年間100-465ポンド減額するというもの。

 また、看護師の新規採用を労働党が掲げる2万4000人の2倍の5万人とすることや、今後10年間で新たに病院を40カ所建設するとした。NHS(国民保険サービス)の財源強化策では、23年度まで毎年340億ポンドを投資することも政策の目玉に挙げた。

 EU離脱のメリットを強調するため、保守党は4つの重要な企業向け課税の一つであるビジネスレート(非居住用資産に対する固定資産税である)や研究・開発税、建設請負事業者が国に支払うVAT(付加価値税)である建設業界スキーム(CIS)、国民健康保険料の事業主負担の税率を引き下げる。他方、3つの大型税項目である国民保険料とVAT、所得税の税率を増税しない方針も打ち出した。(「下」に続く)

提供:モーニングスター社

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