<無料公開>中東の緊迫感高まる、2020年東証は波乱のスタートか――原油や防衛、セキュリティー株には資金流入も

中東情勢

2020/1/6 7:40

 トランプ米政権による空爆でイラン革命防衛隊ゴッズ部隊のソレイマニ司令官が殺害され、中東情勢が一気に緊迫した。世界の金融マーケットにも混乱が広がっている。2020年の最初の取引が行われるきょう6日の東京株式市場では、正月休み中の米国株の下落や円高により日経平均株価が大きく値下がりして始まりそうだ。半面、原油相場の急騰や、地政学リスクの高まりをを手掛かりに、資源や石油、防衛関連銘柄などには資金が流入する可能性がある。

米軍がイラン司令官殺害、報復に警戒

 3日のイラクの首都バグダッドへの米軍の攻撃で死亡したソレイマニ司令官は、イランで最高指導者のハメネイ師に次ぐ事実上のナンバー2とされていた。イラン当局は米国に対する報復の検討を示唆し、中東全域に分布する親イラン勢力が呼応する事態も視野に入る。一方、米国側はイランが報復行動に出た場合に、イランの重要施設など52カ所を攻撃対象とする考えをトランプ大統領がツイッターで明らかにした。

 こうした中、金融市場ではリスク回避の動きが強まり、新年の取引が始まった米国ではNYダウが3日に前日比で233ドル(0.8%)下落。安全資産の日本円が買われ、およそ2カ月ぶりに1ドル=107円台まで円高が進んだ(6日日本時間午前7時30分現在は同107.9円前後で推移)。シカゴ日経平均先物(3月物)の3日の清算値は2万3290円(前日比400円安)と19年12月30日の大証終値を350円下回った。

 米国とイランの対立激化が中東の緊張状態を招くとの見方から、原油価格は上昇した。3日は国際指標の北海ブレント先物が19年5月以来の70ドルに急接近したほか、米国市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物も一時前日比で4%超値上がりし、終値ベースで63ドル台に乗せた。イランは原油の輸送の要衝であるホルムズ海峡を通る船舶への攻撃も辞さない構えを示しており、投資家の間で警戒感が膨らんでいる。

 中国とロシアがイラン支持を表明するなど、情勢は予断を許さない。米国とイランの全面対決に発展するかはまだ不透明な状況で、マーケットにとっても大きな転換点となるのか、一時的な波乱にとどまるのかは見極めにくい。このため、ひとまずは値動きの軽い個別株の反応が注目される。

共栄タンカやバルクHD、小型SS銘柄も

 防衛関連銘柄の石川製作所(6208)や豊和工業(6203)、細谷火工(4274・JQ)は北朝鮮絡みのニュースに最も敏感ではあるが、19年6月に日本のタンカーがホルムズ海峡で攻撃された際には株価が上昇した。また、原油の先高観は国際石油開発帝石(1605)や石油資源開発(1662)、コスモエネルギーホールディングス(5021)に物色の矛先を向かわせる可能性がある。このあたりは定石だ。

 狙いを少し絞ると、共栄タンカー(9130)が浮上する。海運株にとって原油高は逆風である半面、ホルムズ海峡の有事はタンカー運賃の高騰を連想させる。時価総額が100億円に満たない同社の株価を持ち上げる材料としては十分とみられる。

 穴株はバルクホールディングス(2467・名セン)。情報セキュリティーのコンサル会社で、さらにはサイバー攻撃に対応するためのトレーニング施設を日米で展開している。イランのサイバー攻撃による報復も想定さる中、イスラエルのサイバージム・コントロール社と共同で手掛ける点は見逃せない。

 このほか、ガソリン価格上昇への思惑から、国内でサービスステーション(SS)を展開する銘柄もマークしたい。特に時価総額が小さいものでは、ダイヤ通商(7462・JQ)、サンリン(7486・JQ)、日新商事(7490・(2))、サンオータス(7623・JQ)などが挙げられる。

(イメージ写真提供:123RF)

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