<無料公開>米・イランの対立激化、金融市場の行方は?――市場関係者に聞く

中東情勢

2020/1/8 12:13

短期警戒も中期トレンドは崩れず

<松井証券・窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト>

 米軍の駐留するイラクのアルアサド空軍基地がイランから攻撃を受け、株式市場でリスク回避の動きが広がっている。中東情勢の緊迫化により、短期的には株価のボラティリティーが大きい展開が続きそうだ。ただ、原油価格が高騰しない限りは日経平均株価が大崩れするリスクは低いとみられる。

 きょう8日は日経平均が前日比で一時600円超値下がりするなどリスクオフムードが高まり、ドル・円も再び1ドル=107円台に突入した。目先は米国とイランの対立の動向をにらんだ値動きの荒い相場となる覚悟をする必要がある。

 一方、中期的な株価のトレンドが崩れる可能性はまだ高くないと思われる。中東情勢を踏まえて、各国の金融当局が緩和姿勢を強める方向で対応することも想定される。ただし、イランがホルムズ海峡の封鎖に踏み切るなどして原油価格が100ドルを超えるような水準まで上昇する場合は、インフレ懸念から金融緩和にも動きにくく、株価の下げを防衛する手立てが失われる恐れがある。

株価は過剰反応、原油需給変わらず

<エモリキャピタルマネジメント代表・江守哲氏>

 イランの米軍への報復攻撃により中東の地政学リスクが再び高まっているが、原油に関しては即座に供給問題が起きるわけではない。このため、株式市場の混乱は一過性と思われる。

 

 原油価格はOPEC(石油輸出国機構)などの協調減産によって堅調に推移しているが、イランと米国の対立激化が実需に大きな影響を及ぼすとは考えにくい。イランにとっては原油は収入減であり、米国サイドとしてもトランプ大統領は再選へ向けて相場の高騰を招きたくないだろう。それを踏まえると、日経平均株価の急落にみられる今回の株式市場の反応は過剰と言える。

日経平均はもみ合いへ

<みずほ証券・中島三養子シニアテクニカルアナリスト>

 中東の地政学リスクが招く原油高は、過去の傾向を見ても一時的だ。このため、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物価格も1バレル=70ドルあたりが当面の上値メドになる。急落した日経平均株価は今後、もみ合いながら下値を固める展開が予想される。

 リスクオフムードが高まる中で、株式には情勢が落ち着くまで資金が向かいにくい。米国側はイランとの戦争を望んでいないとの見方が強いが、一方で両者の対立の根深さが改めて示された。武力衝突には発展しないにしろ簡単に解決する問題ではない。日経平均はしばらく、2万2000~2万3000円のレンジで推移しそうだ。

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