<無料公開>新型コロナ、米欧で非常事態宣言――FRB緊急利下げも弱気心理ぬぐえず、日本株は円高注視

 NYダウが過去最大の下落から一転して暴騰し、金融市場の恐慌ムードが後退した。米国では政府の緊急対策に加え、FRB(米連邦準備制度理事会)がゼロ金利を導入するなど混乱の収拾に余念がない。一方、この週末も新型コロナウイルスは世界で猛威を振るい、感染者数は計16万人を突破した。市場心理は依然として安定しにくいとみられ、今週も相場は落ち着かない展開が続きそうだ。

 12日に1日の値下がり幅としては最も大きい2352ドル安を記録したNYダウだが、13日は1985ドル高と逆に過去最大の上昇劇を演じてまたも投資家を驚かせた。12日の時点で2月の高値からの下落率が28%に達していたこともあり、値ごろ感から買いが膨らんだ格好。取引時間の終盤にトランプ大統領の会見が始まり、非常事態宣言が発動されると、指数は一気に騰勢を強めた。

 米政府は最大500億ドル(約5.4兆円)を投じて、ウイルス検査や治療体制を強化する。また、FRBは15日に政策金利の誘導目標を1.0%引き下げ0〜0.25%にすると発表。先行して打ち出していた短期金融市場への最大1.5兆ドルの資金供給などと併せ、マーケットを支えていく姿勢を鮮明にし、極端なリスク回避の動きを制する構えだ。一時77ポイントまで高騰していたVIX指数(恐怖指数)は、57ポイントに低下した。

 もっとも、「金融政策はウイルスそのものを押さえ込むことはできない」(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)。新型コロナの感染者は爆発的に増え、全米で3000人を上回った。欧州でもイタリアを筆頭に各国で急増し、スペインとフランスでは政府が非常事態を宣言したほか、ドイツは国境封鎖に踏み切った。米政府も欧州からの入国規制の対象を英国などにも拡大し、アップルは中華圏を除く全世界の直営店を休業するなど、経済活動の収縮が続いている。

 NYダウの13日の終値は2万3185ドルだが、先物はFRBの緊急利下げ発表後に2万1000ドル台で推移している。市場の弱気心理をぬぐい切れないまま、中央銀行は手を打ち尽くした格好だ。

 きょう16日の日経平均株価は買い戻しが先行するとみられた。しかし、FRBの緊急利下げを受けドル・円が108円台から一気に105円台まで値下がりしたことを受け、米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の日経平均先物は急落している。日米の金利差がなくなることで、今後円高が一段と進む可能性に注意したい。

(イメージ写真提供:123RF)

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