<無料公開>NYダウ3000ドル安に沈む――中銀の限界か、弱気相場でトランプ大統領再選危うく
日米中銀による金融政策の協調もむなしく、マーケットが再び混乱に包まれた。NYダウは16日に一時前日比で3000ドルを超す暴落に見舞われ、終値は2997ドル(12.9%)安と過去最大の下落幅を今年早くも3回更新した。新型コロナウイルスの感染拡大が米国で本格化する中、リーマン・ショック時以来のゼロ金利を導入したFRB(米連邦準備制度理事会)の措置にも市場の不安は収まらない。株価指数連動型のETF(上場投資信託)買い入れ枠を12兆円に倍増した日銀の追加緩和もリスクオフに歯止めを掛けるには至らず、マネーの逆回転が続いている。
◎米株バブル崩壊の様相強まる
もはやパニック売りの範疇(はんちゅう)を超え、買い手のいない状態だ。NYダウの下落幅は2月12日の史上最高値(2万9568ドル)からこの日の安値(2万116ドル)までに9452ドル(32%)に達し、2017年1月のトランプ米大統領就任以降の上昇分のほとんどをわずか1カ月強の間にほぼ失った。ナスダック総合指数とS&P500指数もそれぞれ高値から約30%値下がりし、「米国株バブル」の崩壊の様相がより色濃くなっている。そのきっかけとなった新型コロナの感染者数は、16日までに全米で4000人を大きく上回る。
いずれもスケジュールを前倒しする形で踏み切ったFRBの緊急利下げと、日銀のETF購入枠の大幅拡大。しかし、悪い流れを変えることはできず、疫病に対する中銀の限界が浮き彫りになったかに見える。金融だけではなく、財政面での各国の新型コロナ対策を受けても市場は様子見姿勢を変えていない。この日行われたG7(主要7カ国)首脳によるテレビ会議では、治療薬の開発加速や景気悪化を食い止めるための経済政策の動員などで足並みをそろえる考えが確認されたものの、やはり大きな株価の支えにはならなかった。
各国の政府・中銀が打ち出した政策は規模的には申し分がない。それでも株安が連鎖しているのは、いずれもウイルスを直接押しとどめるものではないという理由に加え、米国株を中心に過剰に進行していたリスクオンの反動の大きさを物語る。米株高の象徴である「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」と総称される巨大IT企業などに集まった大量のマネーが、その周辺を巻き込みながら一斉に逃避しつつある格好だ。GAFA各社の高値からの下落率は16日時点でアップルが26%、アマゾンが23%、アルファベット(グーグルの親会社)が29%、フェイスブックが35%だ。
日本株は売り先行から切り返しも
2万ドル割れが目前となったNYダウ。調整は十二分に進んだとみる向きもある。一方、高値からの下落率がベア・マーケット(弱気相場)入りの目安となる20%を大幅に上回っているたも、急回復は望みにくいとの見方が強い。株安と新型コロナの感染拡大が長期化すれば、今年の大統領選挙にも影響しトランプ大統領の再選を危ういものにする。今後はアナウンス効果がひとまず不発に終わった金融緩和が、実態レベルで機能するかが焦点となる。
米国市場の恐慌を受け売り先行が予想される17日の日本株相場だが、米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の日経平均株価先物の清算値は1万6220円と、16日の日経平均終値(1万7002円)とのカイ離が比較的小さい。また、ドル・円も現在1ドル=106円前後で推移している。日本は新型コロナの感染者数や混乱が少なくとも表面上は欧米より抑えられていることもあり、売り一巡後は切り返す展開も想定される。
(イメージ写真提供:123RF)
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