買い場訪れた日本(3)――個別株はバーゲンセール、はい上がる銘柄は?

 コロナ・ショックでは個別銘柄が問答無用で投げ売られた。国内外の経済がこうむるダメージの大きさに思いを巡らせれば、従来の目線で「割安感」を語ることはできない。ただ、中には魅力的な水準に調整しているものもある。バーゲンセールに乗り遅れるな!

アンリツ――5Gに抜群の安心感、上昇軌道に復帰

 依然として不安定な株式市場でも、アンリツ(6754)は安心して身を任せられる数少ない銘柄の一つ。日本で商用サービスが開始した5Gの有力銘柄として知られ、市場の混乱で大きく調整した株価水準は魅力的に映る。

 同社は通信系の計測器メーカーで、米キーサイト・テクノロジーズとしのぎを削る世界大手。5Gについては基地局や携帯電話に開発、量産の両面で需要が見込まれ、すでに受注は高水準だ。5G用スマートフォンのほか、5Gで実現する「超低遅延」「多数同時接続」といった特徴に関する世界規格に絡んでも大きな波をとらえる公算だ。

 米中貿易摩擦により、アンリツのライバルで米国企業のキーサイトに逆風が吹いたという見方もある。ここへきて、新型コロナウイルスをめぐり米中関係が再び悪化し始めた。円安も収益にプラスとなるなど、今後も選別買いが向かいそうな条件に恵まれている。

 株価は直近底を打ち、コロナ・ショックで離脱しかけた上昇トレンドに再び復帰しつつある。

キリン堂HD――訪日客株にあらず、2番底確認か

 思わぬ特需に沸くドラッグストア(DS)株の中で、調整の行き過ぎた銘柄がキリン堂ホールディングス(3194)だ。株価下落は1月に前2月期の業績予想を下方修正した影響もあるが、それとは別の誤解も含まれる。

 大阪を地盤とするDSということもあり、市場ではしばしば「インバウンド(訪日外国人観光客)銘柄」に挙げられる。しかし、郊外のロードサイド店が主軸の同社は流動客への依存度は低く、免税売上は全体の2%未満に過ぎない。新型コロナの感染拡大によって中国人客は激減しているものの、「ほとんどインパクトがない」(キリン堂HDの経営企画部IR室)。

 新型コロナに絡んでは、マスクや消毒液、食品の買いだめが売上を押し上げ、直近2月の既存店は前年同月比で16.5%の大幅増収となった。消費増税の逆風が昨年10月をピークに一巡する中で、スーパーなどからの客足のシフトもとらえているようだ。 株価は今回のコロナ・ショックで付けた底(1314円)が、2018年末の安値1117円に対応する2番底となりそうだ。PERは約11倍とセクター相対で割安感が残る。

三協立山――資源価格下落追い風、宅配ボックスにも関心

 アルミ建材大手の三協立山(5932)は、資源価格の下落が収益改善につながる。「巣ごもり」需要の拡大に伴い、宅配ボックスも関心を集めそうだ。

 今5月期上期の連結営業利益は30億円(前年同期比2.4倍)。消費増税後の売上の反動があったものの、製品価格の値上げや原材料のアルミニウム価格の下落により収益性が大きく改善した。足元でもアルミの先物相場は調整が続いている。通期の営業利益は40億円(前期比5.4倍)を見込むが、上期の進ちょく率は74%に達している。

 一方、同社は宅配便に対応し、インターホンや照明が一体となった宅配ボックスも手掛けている。EC(=Eコマース、電子商取引)市場の成長とドライバー不足に伴い宅配ボックスの需要が伸びている。新型コロナの拡大で「巣ごもり消費」が一段と押し上げられる中、EC関連株としての側面は見逃せない。

 株価は1月の高値から4割超の調整を挟み、ようやく底打ち感が出てきた状況。信用倍率は0.08倍と極端な売り長状態で、売り残は27万株と過去25営業日の1日当たり平均の出来高の3倍に上る。

山王――収益好転見逃せず、水素関連の側面も

 小型株からはメッキ加工の山王(3441・JQ)をピックアップする。同社も5Gが業績回復のドライバー。今7月期上期(昨年8月~今年1月)の業績は営業損益が0.7億円の黒字(前年同期は0.6億円の赤字)に浮上した。

 5G対応のスマートフォン向けにコネクターの需要が上向く中で、メッキ加工にも恩恵が波及した。設備投資も奏功してニーズに対応した同社の上期の営業損益は、計画比でも上ブレしている。

 5Gでは通信速度の高速化に伴い、同社が手掛ける高い精度の金属の表面処理加工技術に活躍の場が広がる。一方、水素社会の関連銘柄でもあり、政府が目指す水素社会に絡んでも物色の矛先が向かいやすい。

 財務に不安のある無配株だけに、これまでの3銘柄銘柄と比べて危うい面があることは否めない。しかし、一定の流動性が確保された小型株(時価総額22億円)は貴重な存在だ。

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