<新興国eye>カンボジアに過去最大規模の円借款―国道5号線改修に294億円

新興国

2020/4/3 10:50

 3月24日、プノンペンにおいて、三上正裕大使とプラック・ソコン外務国際協力大臣との間で、カンボジアに対する2件の有償資金協力(合計294億1700万円)および3件の無償資金協力(合計47億2100万円)に関する交換公文の署名が行われました。引き続き、円借款貸付契約も調印されました。調印式には、フン・セン首相も参加しました。カンボジア向けの供与額としては、過去最大級の円借款の供与となります。

 円借款対象の案件は、国道5号線改修事業のプレッククダム-スレアマアム間(第三期、借款金額117億1500万円)とスレアマアム-バッタンバン間、およびシソポン-ポイペト間(第二期、借款金額177億200万円)です。これらの事業は、南部経済回廊の重要なルートである国道5号線(プノンペン-タイ国境)を4車線化し、主要都市についてはバイパスを建設する計画の一部です。条件は、年利0.01%、償還期間40年(10年の据え置き期間を含む)という大変譲許的なものです。

 日本政府はこれまでに5件、総額581億9300万円の円借款を供与して国道5号線の改修を支援しています。「バッタンバン-シソポン間」(13年5月16日に第一期88億5200万円、17年3月30日に第二期111億3600万円)、「プレッククダム-スレアマアム間」(14年7月10日に第一期16億9900万円、16年3月31日に第二期172億9800万円)、「スレアマアム-バッタンバン間、およびシソポン-ポイペト間」(15年3月30日に第一期192億800万円)について円借款貸付契約を締結しています。今回の供与を合わせると、総額876億1000万円となります。

 国道5号線は、プノンペンとタイ国境を直結する重要なルートであり、プノンペン周辺に進出している日系企業にとっても、サプライチェーンの一環としてタイとの連結性を確保するために必要不可欠となっています。すでに工事は進められており、全線が完成するのは23年の予定です。カンボジアにとっても日系企業にとっても非常に大きな効果が期待されます。

 なお、無書資金協力の対象案件は、タクマウ上水道拡張計画(34億2100万円)、統合的地雷除去および地雷被害者支援計画(10億円)、カンボジアにおけるASEAN関連会議の開催に向けた人員輸送機材等の供与(3億円)です。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。1982年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。07年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

◎当該記事は外部執筆者により作成されたものです。記事は執筆者が信頼できると判断したデータなどにより作成いたしましたが、その正確性などについて保証するものではありません。

提供:モーニングスター社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ