コロナ後の環境に合わせ国債代わりに金を使う新バランスファンド、ピクテ投信投資顧問「バーゲンハンター」

投信

2020/6/3 15:45

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)によって、世界経済は「コロナ前」とは異なる時代を迎えたといわれている。テレワーク(在宅勤務)や時差出勤が広がり、工業製品の生産・物流体制の見直しも進んでいる。新しい時代は、資産運用業界にも容赦ない変革を迫っている。この新しい時代に対応した発想で設計された新ファンドをピクテ投信投資顧問が設定する。6月2日に募集開始された「ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド(愛称:バーゲンハンター)」は、低金利期には国債に代えて金を活用し、基本配分比率を定期的に見直しながら長期的な資産成長をめざすファンドだ。

 パンデミックに対する大規模な経済対策によって先進国国債の利回りがゼロ%台に低下し、「国債利回りゼロ時代」を迎えた影響は大きい。「バーゲンハンター」の発売を記念してオンラインでプレス向け新商品発表会を開催したピクテ投信投資顧問代表取締役社長の萩野琢英氏は、「ゼロ金利時代になって債券で資産保全ができなくなった。これまでの常識であった株式と債券によるバランス運用が通用しない」という。既にアルゼンチンがデフォルト(債務不履行)を起こすなど、新興国を中心に経済不安が高まり、通貨に対する信用が低下している。

 ピクテ投信投資顧問シニア・フェローの市川眞一氏は、「米FRBが17週間で2兆8913億ドル(約311兆円)も資産を拡大するなど、世界の中央銀行はパンデミックで崩れかけた市場を支えるために莫大な資金供給を行った。その結果として市場の落ち着きが得られたため間違った政策とはいえないが、3大中銀(FRB、日銀、ECB)の資産規模が名目GDPの約50%にまで膨れ上がった(リーマンショック前の平常時は10%程度)。その回収は容易ではない。リーマンショックへの対応で中央銀行のリスクは意識されてきたが、コロナ対応の結果、危機のステージは一段と上がった」と、通貨価値の下落リスク(ハイパーインフレ)への警戒を呼び掛ける。

 そこでピクテが注目したのは金(ゴールド)。「金の供給量は、過去50年間で年率1.6%で増えてきたが、米ドルは年率6.1%で増加している。この供給量の差によって金に対する通貨の価値が急落した。安定した価値のある金は、国債に代わる資産保全の手段として考えることが可能だ。株式などのリスク資産との相関関係も国債と同程度の相関関係が確認できる」(萩野氏)と、国債に代わって金を活用することを提言している。

 「バーゲンハンター」は、株式や金、債券、リートなど世界の様々な資産クラスに投資するバランス型ファンドだが、その最大の特徴は、「時代の環境に即した基本ポートフォリオで、魅力的なリスクプレミアムの獲得をめざす」(商品開発チームヘッドの吉川龍雲氏)というもの。債券でリターンが得られない低金利の環境では、株式やリートといったリスク資産を50%、金を50%とし、金利が高い局面では債券の組み入れ比率を高める。債券で十分なリターンが得られる場合は債券100%のポートフォリオにする。基本ポートフォリオは月次でモニタリングし、環境変化に応じて見直す。

 現状は、もっともリスク資産を多く持つ局面とされ、募集当初の基本ポートフォリオは株式50%、金50%になる見通し。株式に金を加えることによって、株式市場の大幅な下落時に下落率を抑える効果が期待できる。「『バーゲンハンター』は、バランス型の中では、もっともリスクが大きい『積極型』に相当するものの、基本配分比率を定期的に見直すことによって、ドローダウンから回復に要する日数が短くなるなど、従来の固定比率型バランスファンドにはない効率的な運用ができる」(吉川氏)としている。

 当初募集は、SBI証券と楽天証券。当初募集期間は6月25日までで26日に設定する。信託報酬は実質最大で税込み年1.7875%。募集期間中にオンラインセミナーを継続的に開催する。現在予定されているのは、4日、10日、18日、24日。ピクテ投信投資顧問の社長、投資戦略部長、ストラテジストらが、それぞれの担当分野の立場から新ファンドの魅力について語る。

 萩野氏は、新ファンドについて「長期的な視点に立って環境に合わせて基本ポートフォリオを見直すというコンセプトはこれまでにない初めての商品。基本ポートフォリオをバタバタと見直すのではなく、長期の資産形成の手段として環境に相応しい資産配分比率をめざしていきます。積立投資など、長期の資産形成においても新ファンドの活用をご検討ください」と語っている。

提供:モーニングスター社

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