<中原圭介の相場観>日経平均の意外高の理由

コラム

2020/6/5 6:58

 日経平均株価が2万3000円に迫っている。3月の初めの時点では、経済のV字回復はないとして想定レンジを1万6000~2万1000円とみていたので、驚きというほかない。

米株上昇と売り方の買い戻し

 日経平均の意外高の理由は、主に二つある。一つは、連動性が高いNYダウの上昇に引っ張られているということ、もう一つは、海外投資家を中心に売り方が買い戻しを迫られているということだ。

 米国市場の関係者の間では、足元の米国株の上昇は大部分がカラ売り勢の買い戻しで説明できるという。3~4月の時点では経済のV字回復を予想する向きが多かったが、5月あたりからU字回復や√(ルート)型回復になると考えるエコノミストが増えてきたため、カラ売りが必要以上に積み上がる環境が整っていたというわけだ。

 ただし、米国株式市場が予想する業績回復は、「新型コロナウイルスの第1波は再拡大しない」「新型コロナの第2波は来ない」「ワクチンの量産が今年のうちに始まる」という楽観的な予想を前提としていることは忘れてはいけない。前のめりの相場には落とし穴があるものだ。

悪材料のマグマは確実に蓄積

 こういった需給相場が続くうちは、悪材料に反応しない地合いが続くだろう。しかしその一方で、米国内で悪材料のマグマは確実に蓄積されつつあるようだ。第1の悪材料は、米国のレムデシビルの第3段階の治験では、期待したほどの効果が出なかったということだ。やはり、多くの感染症専門家が言うように、ワクチンが1年以内にできる可能性は低いといえるのだろう。

 第2の悪材料は、全米140以上の都市で広がるデモ活動の悪影響が危ぐされるということだ。それは、経済的な悪影響だけでなく、新型コロナの感染が再拡大するリスクが高まってしまうからだ。スペイン風邪が米軍の兵士から欧米の人々に広がったのは、当時の反戦デモや労働ストライキを通してだった。歴史の教訓を決して忘れてはいけない。

 歴史の教訓が私たちに教えているのは、人々が密集する活動が感染拡大を引き起こすということだ。今回もその教訓は生かされないのかもしれない。実際に、足元ではロサンゼルスの1日当たりの新規感染者が過去最高となっているのだ。

弱気型のETFに妙味

 日経平均は米国株の上昇と売り方の買い戻しによって、2万3000円に接近しているが、2万3000円はコロナ前の1月の株価水準だということを冷静にとらえる必要がある。歴史を振り返れば、株価が適正な水準を超えて上昇した後は、その反動が大きかった事例は枚挙にいとまがない。

 3月の暴落時に新規で証券口座を開設し、投資の世界に踏み出した個人投資家が実に多いという。これらの個人投資家はまだ「相場の恐さ」を知らない人ばかりだろうから、株価の大きな反動に備えて、リスク管理の手法を学んでほしいと思っている。

 そういった意味では、NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信(=日経ダブルI、1357)など、弱気型のETF(上場投資信託)に妙味がありそうだ。みんなが強気の見通しを持っているせいか、日経ダブルIの価格は日経平均が2万4000円だった時よりも安い。NT倍率が過去最高の水準にある中で、日経平均の天井は近いのかもしれない。

(アセットベストパートナーズ 中原圭介)

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