<新興国eye>ムーディーズ、カンボジア格付「B2」を維持

新興国

2020/6/5 12:24

 5月22日、国際的格付機関のムーディーズは、カンボジアのソブリン発行者格付を今回も「B2」で変わらずと発表しました。また、今後の見通しも「安定的」としています。中国や欧米の経済のスローダウンの影響を受けて、カンボジアの20年の成長率はマイナス0.3%に鈍化すると予想しました(前回5.5%)。21年には経済はリバウンドして成長率は6.0%に戻ると予測しています。

 格付を維持した理由として、長期的な成長の予想と対外債務の健全性を挙げています。新型コロナについては、国内の感染は限定的ですが、投資と観光に大きな影響を与えるとしています。特に中国との関係が密接なため、中国からの投資・観光に影響が懸念されるとしています。カンボジアにとって中国は最大の投資国であり、海外直接投資の43%を占めています。また、カンボジアにとって主要輸出先である欧米の経済の落ち込みは、カンボジア製品に対する需要を大きく減少させるとしています。

 金融については、過去10年間は建設、不動産、住宅向けを中心に大きく伸びてきたものの、海外経済の落ち込みを契機とした不動産価格の暴落が、カンボジアの経済全体と金融セクターにとって大きなリスクとなっています。

 格付の見通しを「安定的」としたことについては、成長の一時的落ち込み、高度なドル化、貸付の急速な伸びなどのマイナス要因はあるものの、高い潜在成長力、好調な政府歳入、政府借入の健全性などを考慮したものとしています。

 格付向上のためには、組織や政策の効果を改善するための改革の実行が必要と指摘しました。他方、経済全体に影響を与え得る金融セクターの落ち込みや海外直接投資の継続的減少は、格付の引き下げにつながりかねないので留意が必要としています。

 なお、ムーディーズの格付では、「Aaa」から「Baa」までの10段階は「投資適格」、「Ba」以下は「投機的」と分類されています。カンボジアの「B2」は、「投機的とみなされ、信用リスクが高いと判断される債務に対する格付」と定義される「B」のうち中位にあることを示しています。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

◎当該記事は外部執筆者により作成されたものです。記事は執筆者が信頼できると判断したデータなどにより作成いたしましたが、その正確性などについて保証するものではありません。

提供:モーニングスター社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ