つみたてNISAの非稼働口座が4割超、積立投資で資産形成の魅力の再確認を

投信

2020/7/7 8:32

 金融庁が6月30日に発表した「NISA口座の利用状況調査(2019年12月末時点)」で、つみたてNISA口座で19年末までに開設された約190万口座の4割超で19年に1度も買付されることがなかったことがわかった。せっかく、資産形成に興味を持って口座開設はしたものの、一度も投資されることなく口座が廃止になる場合もある。また、投資を開始したものの、1年もたたずに解約してしまう人も少なくない。国内の投資人口のすそ野拡大をめざして18年1月にスタートした制度だが、つみたてNISAの定着や拡大には、その入り口の段階で早くも大きな課題が突き付けられた格好だ。

 つみたてNISAの口座で、19年1月1日から12月31日までに1度も買付けがなかった口座数は80.45万口座。全体の約190万口座の42.34%を占める。20歳代、30歳代という若い世代で未買付口座が目立ち、20代は約30万口座の47.11%、30代は約48万口座の48.01%で一度も買付けがなかった。

 一方、つみたてNISA口座の商品別の投資行動をみると、2019年の1年間で投信の買付額に対し、売却額が12%程度を占める。積立投資の魅力は、投信など値動きのある金融商品を毎月一定の金額で購入し続けることで、価格変動リスクを抑える「ドルコスト平均法」の効果が得られるところにある。5年、10年と継続して積立投資を行うことによって、その間にコロナショックのような大幅な価格下落があったとしても、最終的には投資収益に結びつけていくという考え方だ。つみたてNISAを始めても、1年も経たずに売却してしまえば、積立投資のメリットを受けにくくなってしまう。

 この売却額と買付額の比率をみると、インデックス投信で積立投資をしている30代、40代では7%台に低下する。70代で70%超となり、80歳代以上では買付額よりも売却額が大きくなるが、高齢者は資産を取り崩す世代であるため、売却額は大きくなって当たり前だ。ただ、20歳代で11%超とやや高い。せっかく長期の積立投資が可能となる年代で始めたにもかかわらず、短期間に売却してしまう人が意外と多い。

 もっとも、2019年は株価が右肩上がりで、大きく上昇した1年だったということも関係しているだろう。新興国も含む世界株式指数であるMSCI ACワールド指数(米ドル・ベース)の年間騰落率は24.0%のプラス。日経平均株価は年初に2万円程度だったが、12月末には2万4000円台へと18.2%上昇し、NYダウも2万3000ドル台だった株価が、年末には2万8600円台へと22.3%値上がりした。順調に値上がりする株価を前にすれば、「毎月コツコツと投資するよりも、一括で投資した方が効率が良い」と感じる人がいたとしても不思議ではない。

 実際に、積立投資で日経平均株価を月末に毎月一定額を購入し続けた場合、19年の1年間に積立投資成績はプラス8.8%に過ぎない。一括投資していた場合は18%も値上がりしたことと比べると割が悪い。同様に、NYダウでの積立投資は、7.6%のプラスにしかなっていないが、一括投資の場合は22%以上も値上がりした。積み立てでコツコツ投資していることが馬鹿らしく思われたかもしれない。

 ただ、一括投資に切り替えてしまった人は、今年3月のコロナショックによる大幅な株価下落では肝を冷やすことになっただろう。日経平均株価もNYダウも19年の1年間で値上がりした部分を、あっという間に、すべて吐き出して、さらに下がってマイナスになってしまった。幸いにして株価は2カ月ほどで下落分の多くを回復したが、今後も不安定な状態が続くとみられている。不安定な市場ほど、積立投資の効果が出やすい。

 つみたてNISAで納得のいく成果が得られるまでには、時間が必要だ。18年1月にスタートしてから2年半が経過したが、この間に世界の株価は、アップダウンはあったものの、大きくは横ばいになっている。当面するコロナ禍を克服し、世界経済が次の成長ステージに至った時に、それまでため込んだ投資口数が大きく花開くことになるだろう。1年、2年の成績で投資成績を判断しないで、10年後、20年後に向けた資産形成だと腹をくくって継続したい。

 つみたてNISA口座で1年間に1度も買付がない口座が若い世代にも多いのは残念な結果だ。せっかく投資を始める決断をし、書類等を揃えて口座を開設するまで進んだ方々が、実際に投資を始められない理由はどこにあるのか。口座を提供する証券会社や銀行は、今一度、その間隙を埋める努力をしてほしいものだ。

提供:モーニングスター社

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