ラクスルは伝統的産業の構造改革目指す、「ハコベル」「ノバセル」育成

株式

2020/7/10 9:16

 ラクスル<4384.T>は印刷業界の効率化を追求し、印刷・集客支援のシェアリングプラットホーム「ラクスル」を展開する。さらに、「ラクスル」での成功体験、ノウハウをもとに、他業界にも進出し、現在は広告、物流のプラットホームも育成しており、将来的な成長力強化を図っている。

 「ラクスル」のビジネスモデルは、顧客が「ラクスル」で部数や納期を選んで印刷データをアップロードすると、同社が提携印刷会社へ印刷を委託し、印刷会社が印刷物を顧客の元に届けるというもの。同社が自社で印刷工場を持つことなく、提携印刷会社の空き時間を活用することで、仮想的に巨大な印刷工場を構築しており、低価格のサービス提供を可能にしている点が強みだ。

 同社はエンジニアを自社で持ち、必要なソフトウエア、システムの開発を内製している。また、ただインターネット上で顧客と企業のマッチングをするだけでなく、提携会社の生産プロセスの改善など、現場に深く入り込んだ構造改革にも取り組む。現状では印刷・集客支援業界の「ラクスル」以外に、物流業界の「ハコベル」、広告業界の「ノバセル」も展開中だ。今後はEC/マーケットプレイスでの取引コストの改善に加え、SaaSで業務コストの効率化を図り、伝統的な産業を生産性・収益性の高い構造へ変革することを目指している。

 「ハコベル」は物流業界のシェアリングプラットホームで、19年2月にサービス体系、サービス名称を変更した。運送会社と荷主のマッチングサービスとして提供してきた従来の「ハコベル」は軽貨物事業者と荷主のマッチングに特化し、名称を「ハコベルカーゴ」とした。さらに、一般貨物事業者及び大手物流荷主向け求配車サービス「ハコベルコネクト」を新サービスとして開始した。

 「ノバセル」はテレビCM、タクシー広告、Web動画など動画広告市場において調査・企画から制作、放映、分析までをワンストップでできるサービスで、20年4月にサービス名称を「ノバセル」とした。同サービスではクラウド型テレビCM効果測定ツール「ノバセルアナリティクス」を活用し、従来は難しいとされてきたテレビCMの広告効果を測定できるようにして、運用型の動画広告配信を可能にしている。同社は広告主として14年からテレビCMを中心としたマーケティング活動を実施し、独自の手法でテレビCMの効果検証を繰り返すことで売上高の約20倍増を達成しており、そのノウハウを活用している点でも期待だ。

 20年7月期業績は6月に営業損益予想を従来の5億6000万-6億6000万円の赤字から、3億4000万-4億2000万円の赤字(前期実績1億4300万円の黒字)に引き上げた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で印刷需要が一時的に落ち込んだものの、緊急事態宣言の解除後は前年と同水準まで回復している。こうした中で、売上総利益率の改善、生産性向上の取り組み、広告宣伝費の一時的な抑制が効果を上げる見通しだ。

 今後は広告宣伝費などの変動費を慎重に投資しながら、「ラクスル」に続いて、「ハコベル」「ノバセル」の成長ステージ入りを目指す。また、新型コロナの影響について、同社の松本恭攝代表取締役は「これをきっかけに、各業界のデジタルシフトが進む可能性があり、当社事業の拡大につながる期待がある」と話している。

提供:モーニングスター社

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