<新興国eye>タイ中銀、政策金利を据え置き―市場予想通り

新興国

2020/8/6 11:23

 タイ中央銀行は5日の金融政策委員会で、新型コロナウイルスのパンデミック(感染症の世界的流行)がピークを過ぎ、経済活動の再開による景気回復の見通しやデフレ懸念の後退を受け、政策金利である翌日物レポ金利を過去最低の0.50%に据え置くことを全員一致で決めた。市場予想通りだった。

 中銀は20年2月会合で0.25ポイント引き下げたあと、3月20日には緊急会合を開き、パンデミックの悪影響により、タイ経済のリセッション(景気後退)懸念が強まったとして、政策金利を0.25ポイント引き下げた。その後の3月25日の定例会合では据え置きを決めたが、パンデミックの悪影響が一段と強まった5月会合で今年3回目となる、0.25ポイント再利下げを決めている。この結果、2月以降の利下げ幅は計0.50ポイントに達した。しかし、前回6月会合から現状維持に転換し、これで2会合連続の据え置きとなる。

 中銀は会合後に発表した声明文で、現状維持を決めたことについて、新型コロナ感染拡大がピークを過ぎ、これまでの金融緩和措置と流動性対策がタイ経済の回復やインフレ率の物価目標への収束、金融市場の安定に寄与していることを挙げた。

 タイ経済の見通しについては、「国内で新型コロナ感染防止のための経済抑制措置が緩和され、世界経済の活動も徐々に改善していることから、タイ経済は徐々に回復していく」とした上で、「これまでの臨時会合で導入した金融緩和政策や財政、金融、流動性供給の追加措置は、新型コロナのタイ経済への悪影響を緩和し、経済支援、さらにはインフレ率の物価目標への収束、金融市場の不安定リスクを低下させるのに役立っている」との認識を示した。

 インフレ見通しについては、「20年のインフレ率はマイナスの伸びとなる見通しだが、これまでの予測通り、21年には物価目標に収束する」としている。

 一方、通貨バーツがドルなどの主要通貨に対して急速に上昇していることについては、「前回の会合時よりバーツ高が進んだ。ここ2週間でバーツはドル安を反映し、急速に上昇しており、これは景気回復に悪影響を与える」と懸念を示している。その上で、「為替相場の進展を注視し、適切な追加措置が必要かどうか検討していく」と述べている。

 今後の金融政策については、前回会合時と同様、「今後、われわれは次回以降の金融政策を検討するにあたり、タイ経済の動向やパンデミックの悪影響、これまでに導入した財政刺激策や金融安定化策、金融市場への流動性対策などの効果を注視する」と当面、政策効果を見極める考えを示した。ただ、今回の会合でも、「必要に応じ、追加の金融政策手段を取る用意がある」としている。

 政策金利がすでに過去最低のゼロ金利水準に達していることから、中銀は伝統的な金利調整だけでは景気刺激の効果に限界があるとして、国債などの資産買い入れによる量的金融緩和(QE)導入やイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の検討を開始している。今年9月末に、中銀総裁がウィラタイ・サンティプラポップ総裁から現在の委員メンバーであるセタプット・スティワートナルプット氏に代わるタイミングが注目される。

 次回会合は9月23日に開催される予定。

<関連銘柄>

 タイSET<1559.T>、iS新興国<1362.T>、アジア債券<1349.T>、

 上場EM債<1566.T>、上場MSエマ<1681.T>、アセアン50<2043.T>

提供:モーニングスター社

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